古里に『笑顔』と『活気』 生活取り戻す住民、インフラ整備進む

 

 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故から8年を迎えた。津波による被害が甚大だった浜通りの沿岸部では災害公営住宅や復興道路、常磐道、JR常磐線など住民生活を支えるインフラの整備が進み、防潮堤や防災緑地など有事に備える態勢も整いつつある。

 原発事故による避難区域では2014(平成26)年の田村市都路地区以降、9市町村で避難指示が順次解除された。新たなまちづくりが進む地域では、避難先から帰還し、古里での生活を取り戻した住民の姿も見られるようになった。

 原則立ち入りが制限されている帰還困難区域でも特定復興再生拠点区域(復興拠点)では住民帰還を目指し除染作業が本格化している。しかし、復興拠点は帰還困難区域全体の約8%に当たる約27平方キロにとどまる。これまでに避難解除となった地域でも生活インフラが十分に整っていないことを受け、住民帰還が1割に満たない自治体もある。

 復興の進み着実に

 【楢葉】楢葉町北田地区の国道6号沿いに昨年6月にオープンした公設民営の商業施設「ここなら笑店街(しょうてんがい)」。スーパーや飲食店、カフェ、理容店など10店舗が入居し、帰還した住民の暮らしを支えている。地元だけでなく、近隣町村からも家族連れらが訪れ、昼食や買い物を楽しんでいる。敷地内に整備された交流施設では音楽やアートイベントが定期的に開かれ、商業施設とともににぎわいづくりの拠点となっている。

 【いわき】塩屋埼灯台の下に広がるいわき市の豊間海岸は、東日本大震災前は市内屈指のサーフィンの人気スポットとして、県内外から訪れるサーファーでにぎわっていた。被災から8年が経過し、防潮堤設置や12.8ヘクタールの防災緑地整備など県による復旧・復興事業が完了、16日に竣工(しゅんこう)式を控える。昨夏には震災以来初めてのサーフィン大会が開催されるなど、海岸はかつての姿を着実に取り戻しつつある。

 【飯舘】ブランド牛「飯舘牛」の産地として知られる飯舘村では和牛の繁殖が始まり、畜産の村に東日本大震災前の風景が戻りつつある。生産者は村を代表するブランド牛の復活を目指し、一歩ずつ歩みを進めている。
 真新しい牛舎で約50頭を飼育する佐藤一郎さん(57)は情報通信技術(ICT)機器を導入。牛舎の様子をスマートフォンやタブレット端末で確かめることが可能で、離れた場所からでも牛の様子を観察できる。最新技術を駆使し、飯舘牛の復活に汗を流している。

 【南相馬】東日本大震災で津波被害を受けた南相馬市鹿島区沿岸部で昨年から運転を開始した大規模風力発電施設と大規模太陽光発電施設(メガソーラー)。海岸線に沿って並ぶ4基の巨大な風車など、高台の墓地から望む風景は震災後、一変した。南相馬市の再生可能エネルギーの中核を担う施設は、市民が再生可能エネルギーを身近に学ぶ場として、また新たな復興のシンボルとして親しまれている。

 【新地】東日本大震災の津波で全壊し再建された常磐線のJR新地駅周辺は2016年12月の区間再開通から2年3カ月が経過し、復興関連の整備で様変わりした。
 同駅周辺で進む、液化天然ガス(LNG)によるスマートコミュニティー事業では、LNGを活用した熱や電気を周辺施設で利用する。周囲の複合商業施設の一部やフットサル場が年度内に開設予定で、建設が進む文化交流センターやホテル・温浴施設などほとんどの関連施設も19年度中にオープンする見込み。
 整備により駅から望む景色が施設群に変わったことが、今度は復興の歩みが着実に進んだことを語り掛けている。

 【南相馬】国内有数のサーフスポットとして知られ、9年ぶりの海開きを7月に控える南相馬市原町区の北泉海水浴場と、隣接する北泉海浜総合公園。海開きに合わせ、関係者はプロサーフィン大会や各種イベントの開催を計画しており、相双の観光復興に期待が高まる。東日本大震災の津波で甚大な被害を受けた同公園は昨年3月に災害復旧工事が完了。シャワー室や駐車場などが装い新たに整備された。