神社継承へ「合祭殿が最善策」 福島県神社庁長・丹治正博さん

 
「合祭殿は本県の神社復興の象徴になる」と語る丹治さん

 原発事故に伴う避難指示が出された地域の神社は、環境変化や住民の激減で存続の危機にある。氏子である住民の帰還は思うように進まず、再建費用の確保などの課題も抱える。県神社庁長で福島稲荷神社宮司の丹治正博さん(63)は「合祭殿」に期待を込めて語った。

 災害に起因した合祭殿の建設は全国初で、来年度内の完成を目指している。中野八幡神社を候補地として再建し、合祭殿も兼ねるようにする。通い慣れた神社の姿が浮かび、複雑な心境を抱く氏子もいるだろう。神道での神々や神社は、その土地を守り、存在し続けなければならないが、合祭殿は分霊のため神々や神社はそのまま。ただし、10年後や20年後には、各神社が合祭殿から次のステージに移るようにしたい。

 震災以降、まずは住民の生活復旧が優先されるので、神社再建は後回しになってきた。小さい神社は再建を断念せざるを得ない場合もある。離れ離れとなった氏子から再建資金を募るのは難しく、政教分離の原則から行政の支援も見込めない。各神社に伝わる獅子舞や神楽などの伝統芸能は風前のともしびだ。

 神社への信仰を絶やさず、神事や伝統芸能も未来につないでいく必要がある。その解決の最善策が合祭殿だ。地元の神社の代わりに参拝し、祭りや伝統芸能の伝承の場にも活用して、苦境を打開したい。地域の拠点だった神社が、将来も人々の心のよりどころになることを願う。