【震災5年インタビュー】福島大特任研究員・開沼博氏 自ら復興の将来像を

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 かいぬま・ひろし いわき市出身。東大文学部卒、東大大学院博士課程在籍。専門は社会学。震災後、福島大うつくしまふくしま未来支援センター特任研究員を務める。著書に「はじめての福島学」など。31歳。

 「国の復興施策に地元の人がどう関われるのか見えていない。地元から積極的にアイデアを出していく姿勢が必要だ」。福島大うつくしまふくしま未来支援センター特任研究員の開沼博氏は、福島・国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想など復興の姿が見えつつある中だからこそ、県民自身が能動的に復興の将来像を描く必要性を説く。

 本県は今、風評や復興バブル後の地域経済、(避難指示などが出た)12市町村を中心にした復興などの課題に直面する。開沼氏はこれまでの政府の復興施策の進め方を「県民の信頼と承認を得る努力が足りていない」と指摘する一方、地域が自立して小さな成功事例をつくり、全体を巻き込むような復興の在り方を望む。「そういう経験は県民にとっても何物にも代え難いものになるのではないか」

 若者の社会参加『好機』

 福島大うつくしまふくしま未来支援センター特任研究員の開沼博氏(31)は、震災・原発事故後の本県だからこそ若者にさまざまな社会参加や体験の好機があることを指摘、「何らかの形で関わること」を呼び掛けた。(聞き手・編集局長 菅野篤)

 ―震災と原発事故後の5年間をどう受け止めるか。
 「高齢者の健康や教育など、震災前からあった社会の弱い部分の問題がより深刻になってきた。その問題は常に変化し、復興格差も生まれている」

 廃炉の現場に入り調査

 ―いまだに「福島は危ない」という人もいる。こうした捉え方をどう考えるか。
 「ステレオタイプな言い方をする人がいるが、裏を返せば、福島の問題がそれだけ複雑で理解しにくいことを反映している。今分かっていることを繰り返し伝えていくことと、まだ触れていない部分を整理して伝えることが必要だ。例えば、福島第1原発のことは多くの人は理解していないため、廃炉現場に入り、その状態を伝えるという調査研究を始めている」

 ―復興に関わる国の姿勢をどうみるか。
 「当事者意識を持たず、ひとごとのように話をされても、住民は困惑するだけだ。『政府主導』とは、トップダウンの決断でなく、社会的合意をどう得るかということ。例えば住民とコミュニケーションを取る場合、単なる説明会やパブリックコメント(意見公募)など旧来型の方法ではだめだ」

 ―政府は帰還困難区域を除く避難区域について来年3月の避難指示解除方針を示しているが、帰還は進むだろうか。
 「福島相双復興官民合同チームの聞き取り結果をみると、広野では8割が商売を再開していると答え、楢葉もそれに準じて高い。まず商売が活性化し、後から人がついてくる形になっていることが、さまざまなデータから分かってきている。(避難指示が出た)12市町村周辺に現在、何人が生活しているのかをみると広野、楢葉、川内で帰還した住民と原発・除染作業員を合わせて約3万人に上る。日本の生活圏で3万人規模といえば、過疎とはいえない状況で、さまざまな社会問題が起こる可能性も大きくなる。それをどう解決していくかが課題になってくる」

 試される住民同士の力

 ―被災者の自立支援は。
 「自立は必要。ただ、『公助』から『自助』『共助』に移るのにはエネルギーが必要で、住民同士の力が試される。『被災地』や『被災者』としての立場を抜きにして、福島県や県民の根本的な魅力がどこにあるのかを見いだし、その点を踏まえて次のステップに進むために何ができるのかを考えることが大切だ」

 ―国の復興施策に能動的に関わるにはどうすべきか。
 「例えば福島・国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想に地元の人がどう関われるのかが見えないが、それは国に言っても仕方ない。自分たちで地元のメリットになるよう提案することが求められる。大企業と政府が一体となって大きな産業があり、そこに地域の企業がぶら下がっていた『昭和型』構造ではいけない」

 ―県の将来像をどう描く。
 「首都圏からの近さや自然環境など本県の良い点を自覚しながらもアピールしてこなかったが、今回は、制約がある中で価値をどう拾い上げ、共有して発展させていくかが問われている。世界的に知られてしまった福島第1原発を、逆にどう活用していけるのか、戦略的に行うことは県の新しい姿をつくる起爆剤にもなる」

 ―本県の若者たちに、どんな言葉を届けたいか。
 「これだけ興味深いことが起こり続けている場所はない。例えば社会的合意をつくるプロセスや高齢化社会で健康を維持し地域のアイデンティティーをつくることなどに、何らかの形で関わることができることは何物にも代え難い」