読解力育成に効果 09年度実践指定校の県内4校

 

 09年に実践指定を受けた県内の小学校は、入遠野小(いわき市)、只見小(只見町)、大槻小(郡山市)、富田小(川俣町)の4校。対象は主に4〜6年生。いずれの学校も、まずは子どもたちに新聞に慣れ親しんでもらおうと、新聞の閲覧コーナーを設けたり、児童が目にしやすい場所に注目記事を掲示した。係の児童が配置を変えて掲示したり、閲覧を呼び掛けることで、より関心を高める工夫を凝らす学校もあった。

 さらに、4校とも朝の会や帰りの会などでスピーチを行っていた。家庭や学校で読んだ新聞の中から、興味を持った出来事に対して自分の意見や感想を発表するという試みだ。

 大槻小の荒井久美江教諭は、「良いスピーチをするためにも『新聞を読んでみようかな』と思う児童や、テレビのニュースと同じ内容が掲載されているかを探す児童が増えた」と話す。新聞を通して社会の出来事に興味を持つと同時に、スピーチをすることで児童の表現力や発言力も養われた。

 授業では、社会や国語、総合的な学習の時間を使った実践が目立った。

 児童が「新聞記者」になり、インタビューしたり、調べたことを新聞形式に書く取り組みでは、物事を正確に伝えるための文章の書き方や、見出しや写真の効果を学んだ。その際、新聞は、紙面構成や記事の書き方の特徴をとらえる上で重要な役割を果たした。

 富田小の5年生は、新聞から自分が伝えたい記事を探し、テレビのニュース原稿のようにして相手に伝えた。「選んだ記事をどう解説し、原稿をどのように書いたら分かりやすくなるか、意欲的に考えて取り組む姿が見られた。徐々に伝えたいという思いが強くなり、発表も堂々としていた」と古関俊子教諭。児童の読解力を伸ばすことに新聞が役立った好例だ。

 一方、只見小5年生では新聞を理科の授業に取り入れ、「天気図の読み取り」に挑戦した。天気予報や天気図で実際の台風の進路を調べたり、今後の進路を予想するなどして生活に関連させながら生かした。社会や国語以外での新聞活用は難しい、との声が多く聞かれる中で、幅広い活用の可能性を示した。

 実際に新聞記者を講師に招いた学校では、記者から直接、仕事や体験を聞くことで、児童が新聞の意義や役割を理解するだけでなく、より積極的に活動に取り組むきっかけとなった。

 「調べたことを書いたり、発表を通して児童の視点が次第に変わっていった。人前で発表することにも自信が持てるようになった」と話すのは、入遠野小の田仲裕一教諭。只見小の安斎憲治教諭も「子ども新聞ではあるが、読書の時間に読むようになった児童もいる」と語るなど、一連のNIE活動は、これまで新聞に触れる機会が少なかった児童に変化をもたらしている。

 「新聞は大人が読むもの」という感覚や、学年によっては理解するのが難しい表現もあるため、子どもたちに新聞を毎日読む習慣が身に付くまでは多くの時間を要するが、社会に興味を持ち、視野を広げ、自ら学ぼうとするきっかけになっているのは間違いない。