ジャンプ編集者が明かす漫画実写化への想い

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集英社ジャンプ編集部の『僕のヒーローアカデミア』担当編集者・門司健吾氏

 数々の伝説的な作品を世に送り出してきた週刊『少年ジャンプ』(集英社)のなかでも、いま最も勢いのある作品のひとつが『僕のヒーローアカデミア』(堀越耕平・著)だ。落ちこぼれだった少年・緑谷出久が“最高のヒーロー”を目指して成長していく姿を描く同作。ジャンプが打ち出す“友情、努力、勝利”という少年漫画の王道を踏襲しつつ、王道からズレる“活躍しない主人公”のキャラクター像など一風変わった作風が人気になっている。そんな同作の担当編集・門司健吾氏にその魅力や、編集者としての胸の内を聞いた。担当作品のアニメ化、さらに実写化への想いも語ってくれた。

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◆少年漫画の王道から“ちょっと外した”設定が人気につながった『ヒロアカ』

 2014年の第32号から連載が始まった『僕のヒーローアカデミア』。特殊な能力を持つヒーローたちが続々と登場する物語で、なにもできない少年が主人公という、ある意味ヒーロー漫画の王道を外した設定ながら、その世界観やさまざまな個性を持つヒーローキャラクターは多くのジャンプ読者の共感を呼び、じわじわとファンを拡大。オリエンタルラジオ・中田敦彦や足立梨花、乃木坂46・生駒里奈など“ヒロアカ”ファンを公言する芸能人も多いほか、アニメ放映がスタートするとジャンプ読者だけでなく女性層にも訴求し、注目漫画がひしめく週刊『少年ジャンプ』のなかでも、人気作のひとつとなった。

 門司氏は、ファン層が広がり続ける理由のひとつとして「堀越先生のなかにしっかりとしたヒーロー像というか、思想があるんです」と語る。そこから生み出される作品の魅力を「1話目で主人公の出久くんは、敵を前にしてそんなに活躍をしません。ただ助けようと飛び出しただけ。ジャンプだと主人公が活躍するのが王道なのですが、この作品はちょっとズレているんです。でも誰もがためらってしまうところで、助けられなくても飛び出していけることがヒーローなんだという堀越先生の考え方は新しいですよね」と解説する。

 そんな少年漫画の王道をちょっと外したところが、大きな魅力になって幅広い層へ響いているという。そして「とにかく画の迫力もすごいのですが、堀越先生の熱量がすごい。こう描いたらウケるだろうじゃなくて、作家が魂を込めて身を削って描いている感じが伝わるんです」と、側で仕事をしているからこそ感じられる“熱さ”を明かしてくれた。

◆読者アンケート結果を受けて漫画家と編集者で話し合うことも

 堀越先生への絶大なる信頼感が伝わってくるが「堀越先生のやりたいと思っていることをもとに進めていくという感じです。(新キャラクターは)ネームで初めてデザインを見て『なるほど!』となることが多いです」と編集者としてのスタンスを語る門司氏。同作は個性的なキャラクターも人気のひとつだが「この作品の場合、連載スタート前から堀越先生がかなりストックを持っていたということもありますが、基本的にこちらから言うのは『こういうキャラが見たいです』とか『展開に合わせてライバルを出しましょうか?』という相談ぐらいです」。当然のことかもしれないが、漫画家の想いやアイディアを大切にしている様子がうかがえる。

 週刊『少年ジャンプ』といえば、読者アンケート結果が雑誌の掲載順や連載継続の大きな要因になっているといわれているが、そこに関して質問すると「もちろん掲載順などはアンケートの結果を参考にしていますが、同一ジャンルの作品が続かないようにとか、雑誌の全体のバランスを考えているので、一概にアンケート結果がすべてということではありません」という。しかしながら、毎回の結果を漫画家も編集者も気にしていることも事実であり「やっぱり結果がいい号はうれしいですし、あまり良い結果ではなかったときは、何が良くなかったかを先生と話し合ったりします」とアンケートの重要性を説く。

 また、ここ最近だけでも『ジョジョの奇妙な冒険』『銀魂』『BLEACH』『斉木楠雄のψ難』などジャンプ作品の実写映画化の発表が続き、ジャンプ読者だけでなく世の中をざわつかせているが、こうした実写化やアニメ化について門司氏に聞いてみると、「編集側からしても、(アニメ化や実写化されるのは)すごくうれしいですね。アニメから作品を知って、そこから興味を持って漫画を読むというケースも多いですから。より多くの人に作品のおもしろさを知ってもらうきっかけのひとつになると思います」とプラスに考えている様子。さらに、『ヒロアカ』実写化について問いかけると「この作品の場合、(スケールが大きい)アクションシーンが多いですから、実写化するにはCGなどで相当お金がかかりそうですよね。どのぐらいあればできるんですかね?(笑)」。その壮大な世界観をどう実写化できるのかということには、興味を持っている様子だった。
(文:磯部正和)