TUBE・春畑道哉、"夏"イメージに言及「脱却したいと思ったことも」

(数字はいいね)  このエントリーをはてなブックマークに追加 
ソロ活動30周年を迎えたTUBEのギタリスト・春畑道哉

 デビューから32年にわたって第一線で活躍するバンド・TUBEのギタリスト、春畑道哉が16年ぶりのソロアルバム『Play the life』を発売。ソロ活動30周年を迎えた春畑が、バンドを長く活動するための秘訣や今の音楽シーン、"夏=TUBE"というパブリックイメージについての葛藤を明かした。

【写真】最後の"甲子園ライブ"でギネス世界記録達成したTUBE

◆20歳くらいの頃は嫌でした。何をやっても夏と言われてしまうのが

――ソロでは30周年、TUBEでは32年。バンドを30年以上続けて来られた秘訣は?
【春畑道哉】 いくつか考えられますが、1つはデビュー2年目という早い時期から並行して、ソロ活動をさせてもらえたこと。バンドでは、夏というコンセプトに乗っ取って楽曲を作っていたので、それ以外にやりたいことや興味を持ったことがあれば、ソロとして表現する。それは僕だけじゃなくボーカルの前田も同じようにソロでブルースのアルバムを出して。ムリなものをバンドに持ち込む必要がなかったので、ムダに求めることもなかった。

――楽曲制作の上で、良い環境だったんですね。それ以外では、どんなことがありますか?
【春畑】 あと、TUBEが夏という明確なコンセプトを持っていたこと。夏の期間が活動のメインで、海でツアーをやったり南国に行ってアルバムを作ったり、ハワイでライブをやったり。毎年夏に野外ライブをやって花火を打ち上げて、水しぶきの中で演奏して。夏が忙しい代わりに、冬はちゃんと休めたのも大きいでしょうね。

――夏=TUBEというイメージ。楽曲と季節がまったくのイコールで結びつくアーティストは、唯一無二だと思います。
【春畑】 今となってはありがたいことですが、20歳くらいの頃は嫌でした。何をやっても夏と言われてしまうのが。そこから脱却したいと思って、意図的に冬に発売したこともあって。でも、どうやっても夏のイメージからは脱却できないことに気づき、そこでやっと世間のイメージを受け入れることができて。そこからちゃんと夏というイメージを自分たち自身でも楽しんでやれるようになっていきました。

――TUBEは、学生時代からのメンバーですが、バンドによってそれはマイナスになる部分もあると聞きます。
【春畑】 家族以上にお互いをわかり合っているからこそ、距離の取り方がわかる。もちろん最初の頃は、言い合うようなこともあったけど、いま思えば本気で言い合える存在がいることも良い面だったと思います。すべて音楽、バンドのため。ぶつかっても全員が良い音楽を作りたいと思っているからこそで、良い勉強だったと思います。いま振り返ると幸せな音楽人生だなと思いますね。あと、ファンとスタッフが上手くTUBEを回してくれたことも、長年の活動では大きいでしょうね。

――TUBEのファンは、ファミリー感があることでも有名ですよね。
【春畑】 ファンは、応援もしてくれるけど、それと同じくらいダメ出しもしてくれる。親兄弟でなきゃ言えないようなことまで言ってくれるので、少し怖い部分もあります(笑)。誇らしい面もすごくあって。たとえば海辺でライブをやるときは、海を汚さないように気をつけて、帰るときにファンのみんなが、開催前よりきれいにしてくれるんです。ファンも僕らと一緒に30年歩み続けて来てくれているわけで、ずっと支え続けられているんだなって。彼らの存在が支えになっているし、だからこそがっかりさせたくない。そもそも僕は、ライブで一体感が生まれたときの喜びが好きで、それを味わいたいからアルバムを作っていたようなところがあって。ステージが好きで、一緒に時間を共有したい。その嬉しさが、自分のエネルギーになっていますね。

◆今の若い子はギターを手にしない。少しでもギター人口を増やしていく手伝いができたら

――いま現在、TUBEとソロのバランスは、どのように?
【春畑】 まずはTUBEの活動が基本。TUBEがお休みになりそうだと思ったら、じゃあソロやります! って手を挙げるみたいな。ソロは、やはりTUBEではできないことを意識します。今回のアルバムでやっているような、打ち込みをTUBEでやるのはあり得ないです。だから、生のバンドとは真逆にあるものを考えますね。とは言えTUBEは、平均年齢50歳の4人で長年やって来た経験があるので、どんな曲をやっても誰かのカバーをやっていても、どうしてもTUBEぽくなってしまうというのはあります。良くも悪くもですが。

――それがTUBEの味なんでしょうね。
【春畑】 だから、新鮮なものにするにはどうしたらいいか常に考えています。昨年のアルバムは鳥山雄司さんにプロデュースをお願いして、どうしたらより新しいサウンドが見つかるか考えてもらったし。もちろんソロでやったことが、バンドに反映されることもあります。実際にソロ用に作った曲をプロデューサーの提案で、歌詞を付けてTUBE用に作り直したら、自分ではまったく気づいてなかったけど、やってみたらすごく良かったということもあります。

――最近は、楽器をやる若者が減っているとも聞きますが、実際にどんなところで、バンド離れを感じていますか?
【春畑】 楽器メーカーの方と話をすると、50代の方が買うことが多いみたいです。いまの10代や20代は、コンピュータが当たり前にある世代だし、打ち込みで何でもできてしまう。だからギター1本でと考える人は、減っているみたいですね。機材の普及に伴って音楽の作り方の幅が広がったし、実際にその楽器が弾けなくても音を出せるわけで。誰でも気軽に技術がなくても作れるのは、いいことだと思うんですけど......。

――そこにストップをかけるために、何か具体的にやってることは?
【春畑】 セミナーや講演会で、ギターやアレンジの楽しさを伝えていく活動を、今後はやって行きたいと思っています。実は先日、そのための第一歩のようなことをやったのですが、これを繰り返していけば、少しでもギター人口を増やしていく手伝いができるんじゃないかと思いました。

――ギタリストとして今後の目標は?
【春畑】 やはりいろんな人に興味を持ってもらって、ギターを弾きたいと思ってもらえる演奏をすること。ギターインストって、非常にマニアックな音楽ジャンルという印象もあるけど、歌詞がないからこそできることもあって。いろんな可能性があると思っています。

(文:榑林史章)