新垣隆、騒動後の今を語る 「音楽に向き合う姿勢は変わらない」

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クラシックの世界的レーベル“Decca”より新作を発売した新垣隆

 音楽家・佐村河内守氏のゴーストライターであることを告白し世間を騒がせた、ピアニストで作曲家の新垣隆。あれから約2年半、クラシックの世界的レーベル"Decca"より『交響曲「連祷-Litany-」』を発売。騒動当初からは想像もできなかった多角的な活躍を見せている現在の心境、音楽に対しての想いについて語った。

【写真】まるで別人!? 美人ヴァイオリニストとコラボしたクールな新垣隆

◆ゴーストライターを公表後、音楽家人生は終わるものと思っていた

――このアルバム『交響曲「連祷-Litany-」』は、クラシックの名門Deccaレコードから世界配信。クラシック音楽を手掛ける者としては、非常にうれしいことですよね。
【新垣隆】 はい。とてもびっくりしましたけれど、うれしかったです。

――そもそも、どういう経緯で発売されることに?
【新垣】 4月にリリースした『新生』を、Deccaのプロデューサーが聴いてくださって。ちょうどそのとき私が『連祷』を書いていて、広島で演奏することも決まっていたので、それも録音してひとつにして発売しませんか、と言っていただいて。録音のときのコンサートは、いつもとは違った緊張感も加わって、ほんとうにドキドキしました。

――Deccaというのは、新垣さんにとってどういう存在なのですか?
【新垣】 様々な音楽ジャンルを扱っているレーベルのひとつですが、クラシックファンの間ではとりわけ大きな意味を持つレーベル名です。例えばジャズにおけるブルーノートのようなもの。長年に渡って数多くの名盤を発売しているので、私も含めたクラシックファンは、漏れなくDeccaのレコードを聴いて名曲を知って育って来ました。クラシックを志す者なら誰もが憧れる存在です。

――そこから出してみたいと思っていましたか?
【新垣】 いえ、夢にも思ってませんでした。ですから、すごく驚いたわけです。

――新垣さんの楽曲が、世界中の人の耳に届くわけですが。
【新垣】 クラシック音楽という世界共通の言語で発した、私の言葉をみなさんと共有してもらえることがうれしいです。もうそれだけで十分うれしいのですが、それが世界中で演奏してもらえたら、もっと素晴らしいことだと思っています。

――ゴーストライター騒動から2年半後に、こういう結果を生んだことについては?
【新垣】 ゴーストライターを公表した時点で、正直自分の音楽家人生は終わるものと思っていました。それがこういう形になったのは、本当に多くの方の支えや働きかけがあればこそです。感謝してもしきれないくらい感謝しています。

◆ゴーストライター騒動以降も音楽に向き合う姿勢は変わらない

――「HIROSHIMA」から約13年ぶりの交響曲で、ゴーストライター騒動以降の楽曲になるわけですが、音楽に対する向き合い方は変化しましたか?
【新垣】 音楽に向き合う姿勢は変わりません、音楽は音楽で、それ以上でも以下でもない。そういう意味では、自分自身何も変わってはいないのですが、自分の置かれている状況や自分を取り巻くものが大きく変化しました。また人との関わりという部分で、変化と言うか大きな広がりを持つようになりました。そういう意味では、音楽だけでなく人との真摯な向き合いということも心がけるようになりましたね。だからと言って、それで急に良い曲が書けるようになるわけではないので......(苦笑)。常にベストを目指す気持ちも以前と変わりません。

――作曲家として大切にしていることは何ですか?
【新垣】 常に音に対して貪欲であること。どんな音楽に対しても耳を傾け、演奏家が日々練習を怠らないように、私もひとりの作曲家として、その技術がサビないように日々鍛錬しています。いろんなことに興味を持って影響を受けることもそう。音楽に限らず、映画や本、人と話をすることからもインスピレーションを受けます。
――クラシックは、一般的に敷居が高い音楽と言われることもありますね。新垣さんはそんなクラシックもやりつつ、ポップスの楽曲も手掛けられていて、両者の橋渡しのような存在でもある。クラシックを一般に広めるために、何かやっていることは?
【新垣】 いろいろな音楽ジャンルがあって、それぞれの良さは文化的な背景の違いでもあって。だからこそ音楽は多様なわけですが、クラシックもそのひとつです。クラシックは敷居が高いとよく言われますが、クラシックもポップスやジャズと同じく面白いものなんですね。とにかくクラシックも面白いんだよと、知ってもらうことが第一だと思っていて。こういうインタビューを受けることも、その一貫だと思って活動しています。

――来年1月23日にサントリーホールでコンサートを行うとのことで、どんなお気持ちでしょうか。
【新垣】 サントリーホールもDecca同様、クラシックを志す者にとっては憧れの会場です。これも、私自身"まさか!"の出来事ですが、日本クラシックの最高峰と言える場所で演奏できるのは、本当に光栄です。これも支援してくださったみなさんのおかげです。緊張感もありますが、感謝の気持ちを込めて、良いコンサートにしたいと思っています。

(文:榑林史章)