SMAPベスト盤を読み解く、「世界に一つ」を生んだデビュー曲

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ベストアルバム『SMAP 25 YEARS』(12月21日発売)はファン投票による上位50曲を収録。

 様々な角度からSMAPに迫る連載番外編。12月21日発売されるSMAPのベストアルバム『SMAP 25 YEARS』。ベストというのは通常、そのアーティストに詳しくない人も手に取れる選曲になっているものだが、今作はファン投票で収録曲が決まったこともあり、なかなか“ツウ好み”な選曲になっている。アルバム発売まで1ヶ月を切った今、全50曲をデビュー順に10曲ずつ分けて、“聴きどころ”について語ってみたい。

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◆SMAPのデビュー曲、そこに込められた思いとは?

 一つのアイドルグループが誕生したとき、そのグループとしての個性を探るには、デビュー曲を聴き込むのが何より手っ取り早い。バンドのように、“自然発生的に”できたチームと違い、アイドルのデビューには、本人たちの思いと同等に、プロデューサーや音楽ディレクター、マネージャーなど、多くの大人たちからも“夢”を託される。グループ結成からデビューまでに歳月を要した場合など、早くから応援してくれたファンの夢まで背負わなければならない。そうやって、デビュー曲の“歌詞”には如実に、様々な夢が反映される。アイドルは、そこに込められた思いを声に出して歌うことで、知らず識らずのうちに叶えてしまうのではないだろうか。まるで“言霊”のように。

 91年のデビューから“SMAPブレイク元年”の95年までに発売された10曲の中で、意外な人気に驚いたのはランキング7位の「どうしても君がいい」である。30位にランクインした「君は君だよ」のカップリングで、“ラブソングでハードに踊るSMAP”のクールなカッコ良さが、初期の段階で具現化された曲だ。そんな、“歌って踊るラブソング”が熱望される結果となった一方、冒頭でも述べたとおり、グループに込められた深い思いが伝わってくるのはやはりデビュー曲の「Can’t Stop!! -LOVING-」なのである。

◆歴代3位「世界に一つだけの花」を予見させた「Can’t Stop!! -LOVING-」

 先日、ついに総売上がオリコン歴代シングルランキング3位に躍り出た「世界に一つだけの花」をはじめ、たくさんの大ヒット曲を持つSMAPだが、「デビュー曲は?」と聞かれて、答えられる人はそう多くはないかもしれない。デビュー曲でオリコン1位を取れなかったせいか、“キャンスト”は、SMAP自身、ライブであまり歌ってこなかった。それだけに今回、ファン投票で決定すると聞いたとき、デビュー曲は収録されないかもしれないと、個人的には少し危惧していた。でも、蓋を開けてみれば、無事33位にランクイン。曲調は、明るくてキラキラした“ザ・アイドルソング”だが、その歌詞の内容に目を向ければ、将来的に「オリジナル スマイル」や「世界に一つだけの花」のような“大きな愛”を歌い上げている。“くじけそうなときにも抱きしめて”“君を幸せにする僕はここにいる”“愛を始めよう”などと、他者に対する温かいメッセージが満載で、さらには“S・M・A・P”というグループ名まで入っている。“夢を与える”ことがアイドルの使命だとすれば、こんなにデビュー曲に相応しい歌詞もない。SMAPに大勢の大人たちが託した夢や期待は、“ナンバーワンになること”ではなく、最初から“たくさんの人を幸せにすること”だったのである。

 この曲が、ファンの中であらためて脚光を浴びたのは、20周年のファンイベントを西武園ゆうえんちで開催したときだ。96年に脱退した森且行のことは、公の場ではそれまで滅多に話題にしてこなかったし、たまに口に出しても、あくまでさり気ない流れの中で、だった。それが20周年を境に、メンバー全員が森の話をオープンにするようになった。西武園ゆうえんちでは、デビュー当時の衣装と同じ赤と黄色の、派手なアイドル衣装に身を包み、嬉しそうに懐かしそうに、そして恥ずかしそうに、“キャンスト”を披露。3年後、中居正広がプロデュースした『SMAP×FNS27時間テレビ』(2014年・フジテレビ系)のノンストップライブのセットリストにも組み込まれた。

◆中居が号泣した「BEST FRIEND」、SMAPストーリーの要所で

 “恋愛”よりも、“友情”や“励まし”や“感謝”を歌うほうが、彼らにはしっくりくる。そんなイメージをお茶の間にも定着させたのが、96年に森且行が脱退する直前に、森を囲んで、5人で「BEST FRIEND」を歌った『SMAP×SMAP』(フジテレビ系)だった。中居は涙で歌にならず、木村拓哉が機転を利かせ、歌い終わった後に、さり気なくいつもは中居がするはずのMCを買って出ていた。その無言の連携プレーも、一人一人の森に対するコメントも、何もかもが愛情と思いやりと、でも寂しさに満ちていた。後世に語り継がれる、テレビが生んだ名場面の一つだろう。その後もこの曲は、稲垣吾郎が活動自粛から復活したライブのオーラスに5人で歌われたり、2013年の『SMAP×SMAP SMAPはじめての5人旅スペシャル』(フジテレビ系)では、カラオケで香取慎吾がこの曲を入れたとき、「死んじゃう俺、この曲聴いたら」と呟き、草なぎ剛と香取の歌を聴きながら、中居がボロ泣きしたり。SMAPストーリーの要所要所で、お互いの思いをそっと伝え合えるような、メッセージソングになっていた。

 応援ソング、メッセージソング、友情を歌った曲などが溢れる現在だが、次々とヒットソングが生まれていた90年代、そのほとんどはラブソングだった。応援ソングはともかくとして、友情や人類愛を押し付けがましくなく歌えるのは、男性アイドルグループの特権だったのかもしれないと今になって思う。“キャンスト”や“ベスフレ”がなかったら、「世界に一つだけの花」は生まれなかったに違いない。

◆阪神淡路大震災のあと、日本全国を励ました「がんばりましょう」

 テレビ番組で歌われたことで、楽曲の持つ意味合いが変化したのは、「がんばりましょう」も同様である。阪神淡路大震災直後の『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)で、この曲を歌い踊ったSMAPに、励まされた人も多いのではないだろうか。シャカリキに、暑苦しく、正論を振りかざすのではなく、眠気だらけの顔をしながら、“どんなときもくじけずに”と語りかける。そのスタンスが、アイドルというよりも、ストリートから自然発生した楽団のようでも舞踊団のようでも劇団のようでもあり。バラバラの、自然体の、でもひたむきな感じが、新しい時代のカッコ良さを印象づけた。

 林田健司作詞作曲の「$10」(39位)は、アーティストに楽曲提供を受けた初めてのシングル曲。ゴリゴリのダンスミュージックに乗せた、“テンダラー”と“淫ら”で韻を踏むような遊び心のある歌詞、恋愛の駆け引きを歌う木村の色気(この年、木村がフジテレビ系ドラマ『あすなろ白書』でブレイクする)。どこか反抗的な、退廃的な曲を、まだ半数以上が10代のアイドルグループが歌うことは、当時としては衝撃的だった。『ナカイの窓』(日本テレビ系)に佐藤アツヒロが出演したとき、「“$10”を初めて聴いたとき、SMAPはカッコイイ歌歌えていいなぁと羨ましかった」と語っていた。SMAPがこれまでのアイドルとは違う、ということを印象付けた一曲だった。

◆デビューから4年、SMAPの音楽とメンバーの歌声の変化を知る

 「俺たちに明日はある」(48位)は、木村がダウンタウンの浜田雅功とW主演したドラマ『人生は上々だ』(TBS系・95年)の主題歌である。木村主演のドラマで、SMAPが主題歌を担当した初めての曲で、それまでにないロックな曲調やスタンドマイクを使ったパフォーマンスが新鮮だった。当時から、木村はアメリカンなロックな雰囲気を漂わせていて、なんとなく、SMAPというよりも木村拓哉その人に書き下ろした曲っぽくもある。とはいえ結果的に、アイドル曲から始まって、ヒップホップやラップ、ファンクやソウルのようなブラックミュージックに寄りがちだったSMAPの音楽性が、この曲で一気にまた新しい局面を見せていく。

 もう一つの聴きどころは、デビューから4年のうちに、6人が6人とも、歌声が大きく変わっていることだ。94年までのシングルのミックスは、森の声が比較的大きく聴こえることが多かったのが、木村の声に男っぽさが増してきていたり、香取の低音が艶めいてきたり、中居の声がセンチメンタルな色合いを見せたり、稲垣が香取とは対照的な軽やかさでユニゾンに彩りを与えたり、草なぎの少し鼻にかかった声が全体のポップさに拍車をかけたり。一人一人の声の変化を感じられるのも、アイドルグループ草創期の楽しみの一つだ。

 今回収録される全50曲のうちここまでの10曲が、“森のいた時代”。SMAPで一番アイドルらしい声をした森の抜けた“喪失感”を埋めるべく、5人の歌は、ココカラまた劇的な成長を遂げるのだった。
(文/菊地陽子)