SMAPのいない"紅白"、その不在に人々は何を感じるか

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SMAPはこれまで“紅白歌合戦”に23回出場

 様々な角度からSMAPに迫る連載第14弾。11月24日、『第67回NHK紅白歌合戦』出場歌手が発表された。これまで、計23回出場してきたSMAPの不在、そこに人々は何を思うのか。彼らが"紅白"をはじめ、数々の歌番組で見せてきた名場面を振り返りながら、SMAPの音楽の行く末を考える。

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◆"紅白"出場者にSMAPの名前なく――

 先日、今年の『第67回NHK紅白歌合戦』への出場者が発表された。NHKの会長からも熱烈なオファーをしているとずっと報道されていたけれど、結局、そこにSMAPの名前はなかった。

 SMAPを"歌番組"で観なくなって、もう8ヶ月が経つ。

 最後に5人揃って"SMAPの持ち歌"を歌う姿を観たのは3月12日。"紅白"と同じNHKで放送された『震災から5年"明日へ"コンサート』の司会を中居正広が務め、5人で福島県会津若松市にある会場で、「オリジナル スマイル」「この瞬間(とき)、きっと夢じゃない」「世界に一つだけの花」の3曲を披露したときだ。オープニングの"オリスマ"では、会場後方の扉からSMAPが登場し、観客にもみくちゃにされながら5人はステージに到着した。最後の曲となった"世界~"でも客席に降り立つ大サービス。"オリスマ"と"世界~"は定番としても、「この瞬間~」が選ばれたのは、その中の"どんなに遠く離れていてもそばにいる"という歌詞に、5人が復興への思いを込めたからに他ならない。

 冒頭では、"思いを歌で届けたい"という中居のナレーションが入っていた。

◆国民的なアイドルと歌番組、それは"コタツにミカン"ほどの安定感

 SMAPには、テレビで持ち歌を披露した際の"名場面"が数多くある。その中でも、"紅白"と聞いて思い出すのが、2014年に、SMAPの5人が審査委員席にいたタモリを囲んで「世界に一つだけの花」を歌った場面だ。タモリとプライベートでも仲良しの草なぎ剛が、歌いながら審査委員席のタモリのもとへ駆け寄った。あとでわかったことだが、それは、リハーサルのときはなかった動きだった。慌てて4人が追いかけて、5人でタモリを囲んだ。タモリにとっては31年ぶりの"紅白"で、SMAPとの"紅白"での共演は初。『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)では、ゲストの曲を聴いているときはほとんど微動だにしないタモリが、このときばかりは少し照れくさそうにペンライトを振っていた。

 これ以外にも、"紅白"で印象的だったSMAPのパフォーマンスはいくつもある。中居の名司会に唸らされたこともある。レコードからCDへの転換期にグループが結成され、生演奏の歌番組が軒並み終了していた時代にデビューしたグループだからこそ、歌番組での一回一回のパフォーマンスを大事にしていたSMAP。古くはNHK・BSの『アイドルオンステージ』、中居が司会を務めた『うたばん』(TBS系)、草なぎ司会の『FNS歌謡祭』(フジテレビ系)、ダウンタウンが司会を担当した『HEY!HEY!HEY! MUSIC CHAMP』(同系)、大晦日の『CDTVスペシャル!年越しプレミアライブ』(TBS系)、阪神淡路大震災後の『ミュージックステーション』で披露された「がんばりましょう」、『SMAP×SMAP』(フジテレビ系)のS・LIVE、『SMAP×FNS27時間テレビ』(同系)のノンストップライブなど、SMAPは、様々な形で、様々な場面、様々な世情に寄り添いながら、自分たちの歌を披露してきた。中でも"紅白"は、デビュー年から長きに渡って出場し、中居が司会を6回も務め、グループとして初めて大トリを任されたり、何度も歌手別最高視聴率を記録したりしている。国民的アイドルグループと呼ばれる彼らと、国民的な歌番組は、まさに老若男女誰もが知っていて、誰もが話題にできる組み合わせとして、"コタツにミカン"ぐらいの安定感があった。

◆タモリを見送った「ありがとう」 SMAPが歌った数々の名場面

 12月21日に発売されるベストアルバムで、ファン投票2位にランクインした「BEST FRIEND」は、4枚目のシングル「負けるなBaby!~Never give up」のカップリング曲だ。本来なら、CDを買ったりライブに足を運んだりするファン以外知ることのなかった歌を、森且行が最後に出演した"スマスマ"で、中居は敢えてピックアップした。ライブで披露されたことで人気曲になった「らいおんハート」のカップリング曲「オレンジ」のように、歌い手はその歌を世に生み出した張本人ではなくても、誠実に歌うことで歌を"育てる"ことができるのだ。そう考えると、つくづく、SMAPのもとに産み落とされた歌は、あんなに魅力的な5人(96年5月までは6人)の親に愛され、育てられて、それぞれがとても幸せものだなぁと思う。

 楽曲提供された曲以外にも、たとえば中居正広が手がけたメンバー紹介ソング「FIVE RESPECT」が、『めちゃ×2イケてるッ!』(フジテレビ系)の企画で、ナインティナイン・岡村隆史のSMAPライブ潜入企画を通して地上波で披露されたこともあるし、『笑っていいとも!』のグランドフィナーレでは、司会のタモリを労うべく、SMAPの5人がタモリを囲んで「ありがとう」を歌う場面もあった。普段は共演することのないお笑い芸人たちの共演も話題だったが、タモリの司会者としての功績を讃え、感謝するための場に相応しかったのは、どんなに優れたスピーチよりも彼らの心のこもった"歌"だった。長くレギュラーを務めた中居、草なぎ剛、香取慎吾以外に、木村拓哉と稲垣吾郎も駆けつけ、湿っぽくなりがちな場の雰囲気が、グッと明るく華やかになった。SMAPの曲を歌うために、メンバーが世話になったその感謝を伝えるために、集結した5人。「ありがとう」は、草なぎの主演したドラマ『僕の歩く道』(フジテレビ系)の主題歌で、ライブでも何度か聴いたことがある曲だったが、あのときほど、しみじみと"いい曲だ"と思ったことはない。

 歌唱に、不器用さが残るせいか。バラエティで持ち歌を披露するとき中居にテレが生まれるせいか、不思議なほど、あのときの「ありがとう」の歌詞は心に響いた。"こんなにも素敵な人がそばにいてくれた""何よりも君と出会えることができてよかった"と――。

 ポピュラー音楽は、歌手に歌われることで生き、変容し、成長する。たくさんあるシングルの一曲として、"ライブのアンコールにピッタリな曲"という立ち位置に落ち着きそうだった「ありがとう」が、この番組を観た人にとっては、人生で大切な人と出会ったことに感謝するとき思い出すような、普遍的な曲になったのである。

◆SMAPのいない"紅白"を観ることで、存在の大きさを感じる

 ここ一番の場面で披露するたび、必ず何か心温まるストーリーを運んでくるSMAPの歌が、現時点では"紅白"では披露されないことが濃厚になっている。でも、一ファンとして、"紅白"でSMAP5人の姿が観たいかと聞かれたら、個人的には「NO」だ。5人でSMAPの歌を歌う姿が観たいのはやまやまだが、その舞台が"紅白"の一コーナーだったとしたら、彼らはきっと番組を盛り上げることに徹するだろう。SMAPはこれまでずっと"他者のために"歌ってきた。あるいはファンに何かを"誓う"ために歌ってきた。大事に育ててきた歌の、さらなる成長を夢見て、精一杯のパフォーマンスをしてきた。私たちが観たいのは、聴きたいのは、お仕着せの、その番組を盛り上げるためのパフォーマンスではない。これからも成長していく歌であり、彼らが守り育てる歌なのだ。

 とはいえ、これはあくまでも私見であって、「コタツにはミカンがないと......」と落胆しているSMAPファンや、お茶の間の"紅白ファン"もいることだろう。一アーティストの"紅白不出場"のニュースが、こんなに世間をザワつかせるなんて。今は、もしかしてSMAPにまったく関心のなかった人が、何気なくSMAPのいない"紅白"を観ることで、SMAPという存在の大きさを感じることもあるのかもしれないと思ったりもする。

 世に産み落とされ、広く知れ渡った歌は、いつまでも死なない。SMAPの歌は、現時点でも、これから先もずっと歌い継がれる普遍性を獲得していることはわかっている。でも、彼らの音楽は、これからだってもっと生み出されてもいいし、まだまだ化けるかもしれないとつい期待してしまう。彼らがすぐ側で歌ってくれなくても、人生の折に触れて、きっとSMAPの歌を思い出すことがたくさんあると思うから、何年か先でもいい。彼らが、SMAPみんなで育てた音楽を愛し続ける限り、この区切りが、何かのはじまりであってほしい。

 なんだか、12月31日はSMAPを思いながら、「ありがとう」をひたすらヘビロテしてしまいそうだ。ここ3ヶ月、彼らを困らせたいわけでも、引き止めたいわけでもなくて、ただ"愛する人へ、ありがとう"と伝えたかったし、今も伝えたい気持ちは消えない。
(文/菊地陽子)