若者たちが三波春夫の歌声でPPAP “伝説の歌声”を蘇らせる新たな手法とは?

(数字はいいね)  このエントリーをはてなブックマークに追加 
音声合成ソフト『ハルオロイド・ミナミ』

 10月からテイチクエンタテインメントより、今は亡き国民的歌手残りの故・三波春夫さんの音声合成ソフト「ハルオロイド・ミナミ(HAL‐O‐ROID)」が無料配布された。すると若い世代を中心に、PPAP(ピコ太郎が歌う「ペンパイナッポーアッポーペン」)を歌わせたり、三波さんの歌に合わせて萌えキャラやイケメンキャラを躍らせたりする動画が、数多く動画サイトにアップされはじめ反響を呼んでいる。音声合成ソフトと言えば、「初音ミク」等のボーカロイドに代表される最新技術だけに、1964年に「東京五輪音頭」を歌った演歌歌手・三波春夫とはどこか対極する“珍コラボ”感もあるが、“昭和の名曲”を蘇らせるヒントが隠されていそうだ。

【画像】イケメン?海をバックにパシャリ!ハルオロイド・ミナミ

◆本物を忠実再現、音声技術が蘇らせる伝説の歌声

 『ハルオロイド・ミナミ』は、三波さんの音声を元にして誕生したバーチャル・アーティスト。テイチクエンタテインメントとエクシング、三波クリエイツ三社共同で開発・発表され、10月20日、音声合成ソフトの配布開始とともに、「東京五輪音頭」「海の声」が配信リリースされた。バーチャル・アーティストとは言え、三波春夫の微妙な演歌調の“こぶし”もきいているし、手振りなどの所作や着物姿も3Dで再現されており、歌手・三波春夫を知らない世代でも、身近に感じることができるようになっているようだ。

 「確かにハルオロイドは、初音ミクさんのような電子音的な雰囲気がほとんどなく、まるで本物の三波春夫さんが歌っているようです。歌っている声の調子のなめらかさといい、ちょっと怖いぐらいですね。しかも、YouTubeにアップされたPPAPなんかも、完璧に三波春夫節になっているんですから(笑)。2014年にも同様に音声合成技術を用いて、亡くなったhideさんの曲「子 ギャル」が発表されましたが、これは本来3rdアルバム『Ja,Zoo』に収録される予定だった幻の曲でした。制作途中のラフなボーカルによるデモ音源をもとに、見事に再現したわけです。すばらしい才能の持ち主が亡くなった後も、音声ソフトで蘇らせることができるわけですから、お蔵入りしていた曲も陽の目を見ることができるし、若い世代が過去の時代のアーティストを可能な限りリアルに知ることもできる。可能性は計り知れないものがありますね」(エンタメ誌編集者)

◆国民的大歌手と現在の流行…ミスマッチ感が目新しさに

 そして今、音声ソフトを使いこなしている若者たちが、三波さんのことは知らないながらも、ハルオロイドにいろいろな曲を歌わせて動画サイトにアップしているのだ。さまざまなバーチャルなキャラクターの声とコラボさせたり、先述のようにハルオロイドの歌に合わせて、萌えキャラ・イケメンキャラを踊らせるなど、自分の好きなように楽しんでおり、音声ソフトの“無料配布”は国民的大歌手・三波春夫を蘇らせることに一役買っているようなのである。

 「いわゆるド演歌には興味のない若者層も、ハルオロイドという音声合成技術によって、日本の演歌や浪花節が持つ前時代的な匂いが消されるので、抵抗感がないんですね。それどころか、衣装でもパフォーマンスでも、もともとスタイリッシュだった三波さんがよりポップに演出されてるので、目新しさもあるんです。独特のこぶしや昭和な感じと、萌えキャラや最先端のPPAPとのミスマッチが逆に新鮮で、若者たちも面白がっているんじゃないでしょうか」(前出・編集者)

◆バーチャル・アーティストだからこそ若者層にも普及 広がる新たな可能性

 また、テイチクエンタテインメントの塩田なおこさんは、ハルオロイドを開発した“狙い”についてこう語る。

 「2020年の東京五輪をひかえ、三波春夫の『東京五輪音頭』にも再び注目が集まっています。三波春夫をリアルタイムで見たことがない世代が増えてきている中、バーチャル・アーティストを作成することで話題になれば、当時を知っている方には懐かしんでいただくこともできますし、若い世代には目新しく感じていただけると思いました。ハルオロイドを通じて、三波春夫がこれまでにたくさん生み出してきた作品や“歌藝”を、若い世代の方々に知っていただくきっかけにしたいと思ってます。リリース後の反響は、正直、狙い以上のものがありました。待ってました!というたくさんの声をいただき、現在も多くのユーザーに楽しんでいただけているようです。無料配布とさせていただきましたが、そのインパクトもかなりあったようです」

 もはや音声合成ソフトはその技術力もさることながら、今回のハルオロイド・ミナミのように、過去の音楽的遺産や偉大なアーティストを現代に蘇らせ、リアルタイムに接することができなかった若い世代に、その才能と実績を知らしめるということまでやってのけてしまう。もちろんそれは日本に限らず世界規模で可能なことであり、今後は“日本発”の企画が世界の物故アーティストたちとコラボし、新しいエンタメシーンを形成するなどということもあるかもしれない。現役クリエイターたちの創造力しだいでは、音声合成技術の伸びしろはまだまだ広がりそうである。