ドキュメンタリーとテーマソングの"一蓮托生"な関係 制作者に選曲のポイントを聞く

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『セブンルール』は女性だけにスポットを当てた新感覚ドキュメントだ

 入れ替わりの早いテレビ番組の中でも、長寿率が高いドキュメンタリージャンル。著名人が全面に出るわけではなく、身近な人々にカメラを向け、意外な人間ドラマや、ぽろりとこぼれる本音が見ている人の心に刺さる。SNSを見てみても、「いつも泣ける」「涙無しでは観ることができない」と、放送後の反響は多く、番組への思いが詰まった書き込みであふれている。そうした感想が出るのは、もちろん内容によるところが大きいが、番組内で流れる「テーマソング」も人間ドラマを盛り上げる上では欠かせない。いったいどのような基準で選ぶのか、ドキュメンタリーとテーマソングの一蓮托生な関係性を探る。

【写真】クライマックスに向けてかかるテーマソングが番組を盛り上げる

■『ドキュメント72時間』のテーマソングは「偶然出会った」
 ドキュメンタリー番組の主なテーマソングとしては、取材対象に密着する"王道"のドキュメンタリー『プロフェッショナル 仕事の流儀』(NHK総合)はスガシカオがボーカルを務めるkokuaの『Progress』、『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)は中孝介の『サンサーラ』を採用。『Progress』においては、この番組のために書き下ろされた新曲だ。

 また、毎回ある1つの場所で3日間に渡って取材を行い、そこで見られるさまざまな人間模様を定点観測する『ドキュメント72時間』(NHK総合)は松崎ナオの『川べりの家』、1人の女性にフォーカスし、輝く彼女たちの生活にひそむ7つのルールを紹介する『セブンルール』(カンテレ/フジテレビ系 火曜23時放送)は矢野顕子with忌野清志郎の『ひとつだけ』と、既存曲が採用されている。

 その曲を選んだ理由について、『ドキュメント72時間』を例にあげると、「以前番組ディレクターがCDショップで流れていた『川べりの家』に偶然出会い、心を打たれるほどの衝撃を受けたことが大きかった」(販売元のポニーキャニオン公式サイトより引用)と明かしている。

■『セブンルール』の曲は制作担当者のiPhoneで発見
 曲選びについてより深い採用理由を掘り下げるべく、『セブンルール』の総合演出を手がける株式会社イースト・エンタテインメントの長島翔さんに話を聞いた。テーマソング『ひとつだけ』は、2006年発表(原曲は1980年発表)と、ひと昔前に発表されている。

「曲選びは重要で、番組の世界観を作る大きな役割があります。さまざまな分野で活躍している女性に密着するという『セブンルール』の内容的に、湿っぽくなるのは嫌だったし、明るく終わりたいという願望もあったので、自分のiPhoneから探していたところ、この曲を発見しました。それまではなんとなく聞いていて、清志郎さんが『離れている時でも ぼくのこと わすれないでいてほしいよ』と歌うのにグッときていたのですが、よくよく聞いてみると『大切なものはひとつだけ』というメッセージがあることに気づきました。『セブンルール』というタイトルなんですが(笑)、つきつめていけば、その人の強い想いはひとつだけなのではないか......と思い採用を決めました」(長島さん)

 また、長島さんは曲選びにおいて、もっとも重要視しているポイントをあげてくれた。

「イントロが良くないとダメ、というのは意識しています。出だしの一音で引き込まれるかが大きく左右されるので。その点『ひとつだけ』に関しては、イントロのピアノを聴いた時点で『いける』と確信しました」(長島さん)

■「パブロフの犬」のように聞いただけで番組を思い出すのが良質なテーマソング
 ドキュメンタリー番組のテーマソングに共通して言えるのが、メロディーの一節を聴いただけで番組のタイトルが出てきたり、映像を思い浮かべてしまうほどの"普遍的なメロディ"がある。

「パブロフの犬のように、『この曲を聴いたらあの番組』と反射的に思い出してもらうことが大事。毎回ごとの挿入歌も、主人公の女性がニューヨークに住む人だったらニューヨーク出身のアーティストの曲、かき氷屋さんの回だったら大瀧詠一さんなど、夏の曲に絞って、テーマからは逸脱しないようにすることは意識しています」(長島さん)

 『セブンルール』は女性に密着するため、視聴者層も女性をメインターゲットにしている。だからといって、いかにも女性が好みそうな曲選びはしないようにしているとのこと。もはや、"名DJ"ともいえる長島さんだが、最後に他のドキュメンタリーを見ていて「この曲選びにしてやられた」と思うことはあるのか聞いてみた。

「『ファミリーヒストリー』(NHK総合)で使用されている、くるりの『Remember me』は、もともと書き下ろしのため、歌詞と番組の親和性が高くて、イントロも最高で......『やられた』と思いましたね」

  "虚構を用いず実際のままを記録した性質を持つ"という意味のドキュメンタリー。内容に嘘がないからこそ、テーマソングも歌詞、曲が軽薄であってはならないし、"変わらない安心感"を与える効果が求められる。