『探偵が早すぎる』10人に1人が気づく"事件が起きない"ドラマへの挑戦

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『探偵が早すぎる』企画成立に必要だった要素とは?(C)読売テレビ

 名バイプレイヤー滝藤賢一と広瀬アリスがW主演する『探偵が早すぎる』をプロデュースするのは、本作で初めて連ドラを企画から立ち上げた読売テレビの中山喬詞氏。何をやっても二番煎じになりがちな今、「誰も死なせず、事件を起こさせない」という斬新な探偵ドラマの狙いを聞いた。

【画像】二枚目パターンの演技を見せた滝藤賢一

◆何も起こらないけれど最後にカタルシスはある

 バラエティの現場で4年経験を積んだあと、東京支社でドラマ制作に関わり3年目になる中山氏。APを経て初めてプロデュースをする『探偵が早すぎる』は、広瀬演じる女子大生・一華が、ある日突然父親の遺産・5兆円を手にしたために、命の危険にさらされるところから始まる。そんな彼女を守るのが滝藤演じる探偵なのだが、彼のトリックを見破る仕事ぶりが早すぎて、一華はそのすごさを知らないというコミカルな設定になっている。

「企画を立てたとき、上司や先輩からは、事件も起こらないし、誰も死なないのに、どうやって視聴者をハラハラドキドキさせるのかということや、観終わったときのカタルシスをどう作るのかという点を突かれ、果たしてこれは成立するのかという意見もありました」

 そんな懸念を払拭するには、「クセの強いキャラクター」と「コメディ要素」が重要になった。

「観ていただくとわかるのですが、キャラクター全員のクセが強すぎるくらいなんです。濃い登場人物が集まってコミカルに見せながら、ミステリーの部分もしっかり描く。そのバランスを注意しました。そして、最終的には何も起こらないけれど、探偵がいつ犯人のトリックに気づいて事件を阻止したのか、それが最後にわかることがカタルシスになると思います」

 探偵のトリックを見破った瞬間は、10人に1人気づくくらいがちょうどいいという。そんな絶妙なバランスを成立させるには、脚本の力が重要になる。

「メインの脚本を担当する宇田学さんは、『99.9-刑事専門弁護士-』(TBS系)も書いていた方。あらゆるジャンルの専門的な知識が豊富にあるうえ、キャラクター作りも上手です。トリックに関しては、難しすぎてもわかりやすすぎてもダメ。宇田さんならそのバランスをきっちり取ってもらえるのではないかと思いました。宇田さんと仕事をしてみて気づいたのは、自分のやりたいことよりも、視聴者の目線を最優先される方だということ。そのうえで、物語にうねりをつけてくださるんです」

◆深夜枠ならではのひねりと飛び道具的なものも入れる

 本作は、読売テレビが制作する『木曜ドラマF』という深夜枠での放送となる。"F"は、それぞれのドラマを象徴するキーワードだが、今回はFastest Detectiveを意味する。

「日頃から、枠のブランディングは社内でも意識しています。今、ブランディングが上手なのは、やっぱりテレ東さんの『ドラマ24』ですよね。攻めたことをやるイメージがついているから、深夜の枠であっても豪華なキャストや脚本家、演出家が乗ってくれる。そんなふうに枠に一本筋が通っていたら、この枠だからと視聴者が継続的に観てくれるのではないかと思うんです」

 今、ドラマ界では医療ものや刑事ものが好調とも言われている。そこに対してはどう感じているのだろうか。

「たとえば『ドクターX』『99.9』にしろ、ジャンルが医療や刑事だから視聴率が良いのではなく、内容がしっかりしているからだと思います。ただ、自分がこの深夜枠でやるならば、王道をやっても勝負にならない。この枠なりの遊びを入れたいと思っています。たとえば、医療ドラマであっても、手術シーンや病院が一切出てこないとか、そういうひとひねりを入れていきたいです。それが枠のカラーになるかもしれない。ただ、ベースとなるものはしっかりと組み立てたうえで、キャッチーさや飛び道具的なものは取り入れるようにしたいです。こっちが攻めてやっていることも、中途半端だと視聴者の方々に見透かされる時代だと思うので、中身がなくて薄っぺらいということにはならないようにしています」

 今回、滝藤、広瀬、水野美紀をキャスティングしたことへの期待を聞いた。

「皆さんそれぞれ、お芝居を作り込んで現場にきてくださるので、そこも見どころになると思います。ずっとご一緒したかった滝藤さんは、今回、三枚目のかっこよさを見せてくれます。滝藤さんご自身は、『俺は二枚目パターンも考えてたんだけど』と言われていたんですけど(笑)。広瀬さんは、『わろてんか』でもコミカルな演技をみせたばかりで、台本を読んだあとも、『私のなかではコメディだと思いました』と言ってくれて、それはありがたい反応だなと思いました。今回は、原作よりも天真爛漫なキャラクターになっていますが、広瀬さんの持ち味がそのまま活かされていると思います。一華を育てるドS家政婦役の水野さんは、淡々とした演技をされているんですけど、滝藤さんも『水野さんだから成立している役。なかなかできることじゃない』と感心されていました。水野さん自身も、抑えたキャラの出すおかしさを楽しんで演じているように見えます。毎回スイッチが入るシーンがあり、爆発するところもあるし、どんどんおもしろくなっていくと思います」

 55分間で緩急をつけて、視聴者を一時も休ませないドラマになっているようだ。新たな挑戦がどう結果につながるか期待したい。
(文:西森路代)コンフィデンス7月30日号掲載