テーマは"原点回帰"SUMMER SONIC開催直前キーマン対談

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写真左より清水直樹氏(クリエイティブマンプロダクション代表取締役社長)、サッシャ氏(ラジオDJ、ナレーター)

 19回目となる「SUMMER SONIC 2018」が8月18日、19日に開催される。今年のテーマは"原点回帰"。主催するクリエイティブマンプロダクション、清水直樹社長と、MCとして第1回からMCとして同イベントに携わっているサッシャ氏に今年の見どころや、洋楽フェスの未来を語ってもらった。

【チャンス・ザ・ラッパーとは?】チャンスにみる音楽ビジネスの転換期(17年06月10日)

■シーンを代表するチャンス・ザ・ラッパーも出演

――19年目を迎えたSUMMER SONIC。今年のラインアップのポイントは?
【清水直樹】テーマの1つは"原点回帰"。ヘッドライナーにノエル・ギャラガー、ベックというロックシーンの大御所を迎えたことが、その表れですね。また、現在のシーンを代表するチャンス・ザ・ラッパー、マシュメロ、さらに新人のジョルジャ・スミス、トム・ミッシュなども加わって、バランスのいいラインアップになっていると思います。
【サッシャ】J・バルヴィンにも注目ですね。
【清水直樹】世界的に大きなムーブメントになっているラテンを代表するアーティストですね。
【サッシャ】自分の番組(J-WAVE『Step One』)でワールドチャートを紹介しているのですが、ここ数年、ストリーミング・サービスの影響が強く反映されるようになって。スペイン語圏でヒットしている楽曲が英語圏でも広く聴かれ、ワールドランキングの上位に入ってくるようになっているんです。世界的には2017年がラテン元年だったと思っていますが、数年後のサマソニで"1ステージがすべてラテンのアーティスト"という状況になってもおかしくないですからね。
【清水直樹】そうだね。初めて出演してくれたアーティストが数年後にヘッドライナー級として戻ってくるのも、フェスの醍醐味だから。コールドプレイ、シガーロスもサマソニの1回目に出てくれて、その後、ビッグアーティストになって戻ってきたので。
【サッシャ】お客さんは"俺が育てた"くらいに思っているかもしれないですね(笑)。清水さんが蒔いた種をお客さんが育てて、花を咲かせる。それもサマーソニックのおもしろさだと思いますよ。

■今年は日本におけるHIP HOP元年

――先ほど名前が挙がったチャンス・ザ・ラッパーも大きな話題を集めています。
【サッシャ】これも先ほどのラテン系アーティストの世界的ヒットの話とリンクするんだけど、チャンスはストリーミングですごいヒットを出して、グラミー賞を獲得したアーティスト。現在のHIP HOPを代表する存在であることはもちろん、ダウンロードからストリーミングへの流れを決定づけ、音楽流通の在り方を変えた革新的なアーティストなんです。ザ・ビートルズに近い位置にいる人ですよね。
【清水直樹】サマソニにチャンスが出て、フジロックにケンドリック・ラマーが出る。これはとても大きな出来事だし、今年は日本におけるヒップホップ元年と言えるでしょうね。

■欧米、アジア、日本のアーティストがバランスよく見られる貴重な機会

――RAINBOW STAGEは若手、中堅の日本人アーティストで固められています。
【清水直樹】次の日本のシーンが見えるようなラインアップだと思います。もともとRAINBOW STAGEは"洋楽フェスのお客さんに日本のアーティストを見せたい"という意図で作ったステージなんですが、来年からは洋楽・邦楽で分けるのをやめようかという気にもなっていて。先ほどから話に出ているストリーミングの普及もあって、音楽の聴かれ方が大きく変化していますからね。ふだんからいろいろなプレイリストで洋邦問わずに音楽を聴いているだろうし、それはこの先のフェスにも影響してくるだろうなと。
【サッシャ】フェスに行く前の"予習"のやり方もまったく変わっていると思います。以前は好きなアーティストのCDをしっかり聴き込んでからフェスに臨む人が多かったけど、最近はストリーミングでサマソニのプレイリストをチェックして、「1~2曲しか聴いてないけど、良さそうだからフェスで観てみる」ということケースが増えているはずなので。
【清水直樹】確かにそうだね。最近はフェスに来る前、来た後の過程が変わってきているというか。サマソニで初めてライブを観て、「良かったからアルバムも聴いてみよう」という人もいるから。
【サッシャ】サブスクのもう1つの効果は"この曲を聴かないとヤバい"という楽曲をすぐにチェックできるようになったこと。チャンスもそうだし、ブレインフィーダー系(フライングロータスが主催するレーベル。カマシ・ワシントン、サンダーキャットなどが所属)のアーティストもそうだけど、大掛かりなプロモーションをやらなくてもこれだけ広がっているわけだから。
【清水直樹】そういえばプロモーション来日もめっきり減りましたからね。アーティストを直接見られる場所はフェスかライブだけになっているというか。プライベートで日本に遊びに来るアーティストは多いだけどね。来てるなら、何かやってよと思うけど(笑)。

■これほど安全でクリーンなフェスは世界的にも稀

【サッシャ】サマーソニックも外国からのお客さんが増えましたよね。もちろんアーティストのセレクションは素晴らしいし、東京からのアクセスも良く、インドアで快適に見られる。僕はMCとして第1回目から参加させてもらっていますが、お客さんもフェスの楽しみ方をわかっているし、これほど安全でクリーンなフェスは世界的にも稀だと思います。
【清水直樹】欧米、アジア、日本のアーティストがバランスよく見られるという意味でも貴重ですよね。実際、最近のサマソニはアジアからのお客さんが1~2割を占めているんです。どの国でもチケットを購入できるスキームもあるので、海外のオーディエンスの獲得は今後も大きな鍵になるでしょうね。
【サッシャ】ヨーロッパのフェスと比べてチケットの価格も安いですからね。もちろん清水さんをはじめ、クリエイティブマンの企業努力のおかげだと思うけど、これだけの規模のフェスをこの価格で見られるのはすごいことですよ。特にVIPチケットは破格ですね。海外だと平気で10万円以上しますから。
【清水直樹】世界のチケット市場はLiveNationが管理している状態で、チケット代も一括して決めてしまうことが多いんです。我々のようなインディペンデントなプロモーターは"日本はその値段では売れない"という交渉をするわけですが、問題は複雑ですね。本当に世界同一の値段がいいのか? ということは考えていかないといけないと思います。近い将来、海外と同じように"あなたのツアーを50億円で買い取ります"というビジネスになる可能性もありますからね。実際、海外はそうなので。
【サッシャ】個人的には売れてるアーティストに金持ちになってほしいと思いますね。そうじゃないと夢が持てないじゃないですか。しっかり稼いで、それを社会に還元するアーティストが出てきてほしいですね。
【清水直樹】そのためにはアーティストにお金が行くようなシステムを作る必要がありますね。チャンス・ザ・ラッパーもそうですが、アーティスト自身がパワーを持ち、音楽シーンを主導していくようになれば、ビジネス的な状況も大きく変わるのではないでしょうか。とはいえ、アメリカのヒップホップ・アーティストのように"マネー、マネー"の世界になるのも困りますけどね(笑)。

■影響力を持っている間に次へのアクションを起こしたい

――昨年はサマーソニック上海を開催。海外でフェスを行う意図は?
【清水直樹】サマーソニック自体を広めるのではなくて、日本のアーティストをアジア全体のオーディエンスに見てもらいたいんですよね。アジアの人たちにとってサマーソニックとフジロックは、コーチェラ、グラストンベリーよりも知名度があり、いつかは行ってみたい夢のフェスなんです。たとえば今年サマソニに出てくれるクラウド・ルーは、母国の台湾ではアリーナクラスのスターですが、サマソニには小さいステージでも出演したいと言ってくれていて。日本の2大フェスが影響力を持っている間に、次につながるアクションを起こさなくてはいけないという使命感もありますね。
――来年サマーソニックは20周年。今後の展望についても聞かせてもらえますか?
【清水直樹】来年は10周年と同じく、3日間の開催にしたいと思っています。ありがたいことに「20周年のサマーソニックにぜひ出たい」という話がいくつもあって、ヘッドライナー、セカンド・ヘッドライナーのうち半分くらいはすでに決まりかけているんです。
【サッシャ】1回目に出演したアーティストが、大きくなって帰ってくるということもありそうですね。
【清水直樹】そうだね。日本のアーティストのヘッドライナーもおもしろいだろうし、30周年に向けて、さらにいろいろな壁がなくなりそうですね。

『SUMMER SONIC 2018』
日時:2018年8月18日(土)・19日(日)
東京会場:ZOZOマリンスタジアム&幕張メッセ
大阪会場:舞洲SONIC PARK(舞洲スポーツアイランド)