自閉症を描く『グッド・ドクター』が好調、障害持つ人々の見方は?

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自閉症を抱える研修医を描くドラマ『グッド・ドクター』(C)フジテレビ

 山崎賢人が主演を務めるドラマ『グッド・ドクター』(毎週木曜 後10:00/フジテレビ系)が、初回放送で平均視聴率11.5%、第2話でも2桁をキープするなど好調だ(ビデオリサーチ調べ)。同作は、山崎演じる自閉症スペクトラム障害を抱える小児外科の研修医が主人公。多くの視聴者から、「感動した」「泣けた」という声が聞こえるが、一方、当事者である同様の障害を持つ人たちにはどう受け止められたのか? WEBサイト『障害者ドットコム』運営スタッフに聞いた。

【写真】瀕死の少年を前に…奮闘する自閉症の研修医・新堂湊(山崎賢人)

■第2話も2桁キープで見逃し配信も好調、山崎賢人の演技も高い評価

 自閉症スペクトラム障害でコミュニケーション能力に問題がある一方、驚異的な記憶力を持つサヴァン症候群。『グッド・ドクター』は、その障害を持つ青年・新堂湊(山崎)が小児外科のレジデント(後期研修医)として、子どもの命のために闘い、寄り添い、共に成長していく姿を描くメディカル・ヒューマンドラマだ。

 視聴率は初回11.5%(2桁発進は木曜劇場で2年ぶり)、第2話も10.6%と2桁をキープ。フジテレビが運営する動画配信サービス・FODの見逃し配信でも、18日までに視聴数80万回超えを達成。ドラマ初回における、見逃し配信視聴数の最高を更新した。

 SNSなどで見られる視聴者の声も好意的だ。なかでも、少年の命を救うきっかけになったにも関わらず、院内で差別的な発言をされる湊が言った言葉「僕は人と違います。慣れています」については、「本人がそれを言うなんて…」「思わず涙した」など多くの反響が。周囲の湊への対応には「医者なのに自閉症を理解していないとは」と憤慨する声もありながら、「現状、今期で一番のドラマ」という意見も見られた。

■障害者福祉に関わる川田さん、『グッド・ドクター』に好感

 このように、一般視聴者からは好評の『グッド・ドクター』。では、当事者である障害を持つ人にとって本作はどう映るのか。20年以上障害者福祉に携わってきた、障害のある人に向けたWEBサイト『障害者ドットコム』代表・川田祐一さんとその妻・直美さんに聞いた。

 川田さんはまず、山崎の芝居について「自然体でとても上手。小児外科医にも取材したことが見て取れ、勉強熱心な姿勢に好感が持てました」という感想を語った。さらに、「精神科医の西脇俊二先生がドラマの監修に入っていて、これまでたくさんの当事者の方と接してきた私が見ても違和感がない描写」と、丁寧な描かれ方に感心したそうだ。

 一方で、病院のルールに合わない行動をした湊が、同僚や病院関係者から辛らつな言葉を投げかけられる場面については、「小児外科医による差別発言や暴力シーンは、同じ臨床現場の専門職として悲しく感じました。でも、一部の現場では虐待やパワハラが起きているのも事実。今後良い方向に展開していくことを期待しています」とコメント。序盤のこの伏線が、うまく回収されることに期待を寄せた。

■障害描くドラマ『ピュア』『聖者の行進』など名作多数、「とても勇気づけられました」

 本作同様、自閉症スペクトラムなどの発達障害や知的障害を扱ったドラマは、これまでも数々制作されてきた。野島伸司が脚本を手がけ、いしだ壱成が主演した『聖者の行進』(1998年・TBS系)、アメリカの小説を元に、ユースケ・サンタマリアらが演じた『アルジャーノンに花束を』(2002年・フジテレビ系/2015年・TBS系)、草なぎ剛主演の『僕の歩く道』(2006年・フジテレビ系)、中居正広主演の『ATARU』(2012年・TBS系)など、名作と言われる作品も多い。

 川田さんの妻で、『障害者ドットコム』スタッフとして働く直美さんは、自身も発達障害(学習障害)があるが、なかでも『ピュア』に励まされたと語る。1996年に和久井映見が主演したフジテレビの月9ドラマだ。

 「当時悩みを抱えて辛い時期でしたが、とても心が温かくなる大好きなドラマでした。自閉症の主人公、優香(和久井)が純粋で可愛く、心が癒されたんです。障害を抱えた1人の女性が成長していく姿に、勇気づけられもしました。彼女が周りの人たちの心を動かしていく様子から、たくさんの大切なことを教えてもらいました」(直美さん)

■「障害者を扱う=感動」の図式、当事者の思いとは?

 当事者たちへも癒しや勇気を与えてきたこれらのドラマだが、一方で様々な物議を生むことも事実。日本テレビの『24時間テレビ』など、“障害者を描く=感動”の図式に疑問を投げかける声が昨今、多く見られるのだ。だが、川田さんはこのような批判について、「私はそうは思いません」と見解を話した。

 「素直に感動を与えることができる作品は素晴らしいと感じています。ただ今後は、(障害者が)主役だけではなく、脇役としてもストーリーを盛り上げられる存在になってほしい。最終的には、日常にある光景の中で単なる通行人Aという役でも、違和感なく作品に登場することが理想だと思っています」。

 川田さんは、障害者の描かれ方に時代による変化も感じているという。

 「例えば『ピュアの』中では、“障害者に興味がない”というセリフがありました。約20年前の作品では、障害は“知らない”もしくは“特別なもの”で遠い存在として描かれていたんです。最近では、自閉症や発達障害という言葉は広く知られ、身近になってきてはいるものの、正しくは理解されなくて、差別や偏見の対象となっていること自体がテーマになる場合も多いです。本作をはじめ、昨今はリアリティある存在として描かれるようになったのは良いことだと思います」(川田さん)

■「相模原の事件があったからこそ、ドラマの果たす役割は大きい」

 障害者を描くことは様々な批判を呼びやすいし、難しいことでもある。もちろん、川田さんと直美さんの意見が障害を抱える人の“総意”ではないかもしれないが、2人はこれらがドラマで描かれ、社会的な理解や関心が深まることに感謝をしている。

 「物議はあるとは思いますが、障害がある本人や家族、周りの人たちが、ドラマを見て考えたり、元気をもらったりもする。また、相模原障害者施設殺傷事件(2016年に神奈川県の知的障害者施設で起こった事件。元職員が多くの入所者や職員を死傷させた)があったからこそ、こういった障害を抱えた方を描くドラマが、差別や偏見を無くすために果たす役割は大きいのではないでしょうか」(直美さん)

 「私自身もADHD(注意欠如・多動性障害)の傾向が強く、忘れ物、電車の乗り越し、約束を忘れることなどが多くありましたが、発達障害を理解し対処することで改善しました。発達障害の傾向のある人は少なくないので、皆さんも障害を他人事と捉えるのではなく、自分のこととして考えられるようになってもらえたらうれしい。こういったドラマを見ていただき、関心を持っていただけたら」(川田さん)

 多くの視聴者にとって、“障害”は身近ではないかもしれない。だが、『グッド・ドクター』のようなドラマで、障害を持つ人々が置かれた状況や気持ち、周囲の人々の思いを感じ取ることはできる。いざ自分が当事者になったら、周りの人が障害を持ったら、何ができるか。こういったドラマは、当事者を励ますとともに、それを考えるヒントをくれる。
(文・衣輪晋一/メディア研究家)