ハリウッドにも進出、サンライズ宮河社長が語る“ガンダム40年”ファン層の変化

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「ガンダムファンは親子2代・3代になり、3階層に向けてコンテンツを同時進行している」と語った、サンライズ社長・宮河恭夫氏。(C)oricon ME

 先日、“ガンダム”がハリウッドで映画化されることが発表された。現在、ガンダムの40周年イヤーとして、NHKの「ガンダム特番」や、スティーブン・スピルバーグ監督の映画『レディ・プレイヤー1』にも登場するなど、さまざまな取り組みを実施してガンダムコンテンツが盛り上がりを見せている。そんな、世界でも類を見ないコンテンツの“機動戦士ガンダム”40年のファン層の変化や今後の取り組みについて、サンライズ代表取締役社長の宮河恭夫氏に話を聞いた。

【写真】11月公開予定の新作『機動戦士ガンダムNT』主人公機

■NHKさんが『ガンダム』を特集するというのは、“文化”になったという証拠

――NHKで5月に行った「ガンダム大投票」番組は社長自ら動かれたとお聞きしましたが。
【宮河社長】NHKさんからガンダム大投票の話が持ち上がった時は、やりましょうと二つ返事でした。NHKさんが『ガンダム』を特集するというのは、『ガンダム』が“文化”になったということ。すごくうれしかったですね。

――番組では計174万投票されて、女性票を獲得した『新機動戦記ガンダムW』、『機動戦士ガンダムSEED』、『機動戦士ガンダム00』といった作品が上位にランクインしました。近年のガンダムシリーズは女性ファンを獲得している傾向にありますね。
【宮河社長】女性票がここまで入るとは思わなかった。NHKかつテレビの特質で40・50代の男性が圧倒的に強いと想像していたんです。『SEED』、『00』の女性ファンは多いけれど、オルガにここまで票が集まるとは。(※キャラクター作品別ランキング1位、キャラクター総合ランキング3位)

――この結果を受けて、今後のガンダムコンテンツの展開に生かそうという考えは?
【宮河社長】そういう考え方はしていません。ガンダムは、“こういう傾向が今ウケている”とか、“女性ファンを意識する”とか、トレンドを追いかけることは絶対にしないんです。だからこそ、『SEED』に女性ファンがついたのは我々も驚いたんですよ。

――近年は美形キャラが多数登場しているので、女性ファン獲得を狙った戦略なのかと思っていました。
【宮河社長】トレンドを追いかけると、“本質”から離れていくんです。僕がガンダムコンテンツで監督にいつも言っているのは、“3つの憲法”を守る事。「戦争状態」「青春群像劇」「ガンダムというロボットが出る」こと。あとは監督と脚本家が、その時代に合わせて作っていくというスタンスです。

――ガンダムの中でも“正史”と言える宇宙世紀シリーズを超える人気の作品が結果としてまだ出てきてない点についてはどうでしょうか?(※作品別ランキング1位『機動戦士ガンダム』、2位『機動戦士Zガンダム』、3位『機動戦士ガンダムSEED』、4位『機動戦士ガンダム00』、5位『機動戦士ガンダム逆襲のシャア』)

【宮河社長】例えば“年齢の差”じゃないでしょうか。『00』(2008年)より『SEED』(2002年)が上なのは6年の差がある。だから、オルガは人気キャラに入っているけど作品で見ると『鉄血のオルフェンズ』(2015年)は5位までに入ってない。20年後は”ファーストガンダム”が1位ではないかもしれません。作品人気は熟成する時間と比例していますね。


■『SEED』が転機に、“機動戦士”を冠するのは富野(由悠季)監督作品だけという暗黙の了解は撤廃

――40年間のファン層の変遷という点で、新規層の獲得に至ったターニングポイントとなった作品は?
【宮河社長】やっぱり『SEED』が一番大きかったんじゃないかな。『W』も女性ファンを獲得して人気となりましたが、ビジネスという点で言うと『SEED』が“圧倒”でした。

――では、現在の若年層ファンの獲得戦略は?
【宮河社長】僕はバンダイにいたときに講談社の『コミックボンボン』の担当をしていたので、『プラモ狂四郎』によって子ども達がプラモデルに熱狂した様子も見ていました。それで、ガンプラの番組を作ろうとなったのが『ガンダムビルドファイターズ』です。子ども向けとなると、戦争や暴力が描けなくなる。そうなるとガンダムじゃなくなってしまう。“子ども用のガンダム”=ガンプラという発想ですね。

――ではガンダム全体ではどのようにファンを育成していくのでしょうか。
【宮河社長】僕がやる前はガンダムの新作は常に1本しか存在してなかったんですが、今は年齢層に合わせて3本くらい同時に走らせています。コアファン向けの『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』があり、『機動戦士ガンダム鉄血のオルフェンズ』のようなティーン向けのTVシリーズがあり、親子向けのガンプラアニメ『ビルド』シリーズというように、大まかに3階層で考え、同時進行で展開しています。

――たしか『ガンダム Gのレコンギスタ』(2014年~)の頃から複数作品を展開していましたね。3階層に分ける理由は?
【宮河社長】ガンダムは、40年続きながら新しいシリーズが生まれ続けている、世界でも類を見ないコンテンツで、もはやガンダムを全年齢層に発信するのは“無謀”。過去にあった「3年に1本」とか「“機動戦士”を冠していいのは富野(由悠季)監督作品だけ」という暗黙の了解みたいなものは僕が撤廃しました。いずれ子どもたちが『ガンダムUC』に興味を持ってくれて、『ガンダムUC』を見ている大人がガンプラアニメが面白そうと興味を持ってもらえたら嬉しい。同時進行することで、3階層のユーザーが行き来できるようなコンテンツにしていきたいと考えています。

■ファースト世代vs新世代、“友和”のきっかけは「実物大ガンダム」&『UC』

――振り返ると、古参のガンダムファンと新しいファンってお互いを認めないという風潮がありました。
【宮河社長】その論争のピークだったのが『SEED』でした。でも、僕はそれがガンダムの良いところだと思っています。「俺のガンダム」っていう想いをみんなが持っている。長年続いてきて“親子2世代”になってきて、今はお互いに仲間として認め合っていると思います。 “世代間の友和”のきっかけになったのが、お台場のガンダム立像であり『ガンダムUC』だと思うんです。

 『ガンダムUC』は新世代ガンダムファンはもちろん、宇宙世紀シリーズの流れで”ファーストガンダム”のファンからも評価されて、新旧世代が認め合った最初の作品となりました。2009年にお披露目した潮風公園での実物大ガンダム立像は50日間で約415万人来場しましたが、多分300万人くらいはガンダムを詳しく知らない人。あれで一気に一般層に認知されて、ファン層が変わったと思います。親子で見に来たお父さんが子どもに「ガンダムは”ファースト”しか認めない」なんて言わないですよね(笑)。立像を見て“ファーストも『SEED』も関係ない”って思ったんじゃないでしょうか。

――そして次はその両世代をまとめる新作『ガンダムNT(ナラティブ)』を展開されるわけですね。
【宮河社長】そう。『ガンダムUC』の続編ですが、全く違うテイストでやります。『SEED』が“21世紀のファーストガンダム”だったように、『NT(ナラティブ)』は新世代のスタンダードにしていきたい。

■“動く”ガンダム立像を制作中、ハリウッドのほか今後は北米で展開予定

――ハリウッド映画『レディ・プレイヤー1』でガンダムが登場して、『ガンダムハリウッド化』の情報もあります。海外の反応はどうでしょうか。
【宮河社長】海外はアジアで大成功していまして、ようやく今年から北米、ヨーロッパを攻めていくことにしました。たまたま偶然、第1弾が『レディ・プレイヤー1』。北米のバイヤーによると、この映画のおかげでガンプラの販売が好調と聞いています。『パシフィックリム アップライジング』にもユニコーンガンダムの立像が出ていました。そういうのも含めて、今年以降から欧米に向けて本格的に展開をし始める。ほかにもいろいろ仕掛けが出てくると思います。

――“40周年”の展開はいかがでしょうか。
【宮河社長】いつになるか分からないけれど、“動く”ガンダムを作っています。実物大ガンダム立像は、立っているだけで400万人強が来場、首が動いただけで「うおーっ!」となったでしょう。動いたら大変なことになりますよ(笑)。もう少ししたら、もっと具体的になると思いますからお楽しみに。

――最後に、サンライズにとって、ガンダムコンテンツはどういうものでしょうか。
【宮河社長】昭和の時代は漫画のアニメ化が主流だった中で、40年前の『ガンダム』以前からオリジナルアニメを作り続けてきたのがサンライズのDNAです。僕は、アニメ制作会社でなく“IP(知的財産)を作る会社”だというのを言い続けている。『ガンダム』は、オリジナルで成功して権利を守っていくんだっていう、オリジナルコンテンツビジネスの“ルールブック”だと思います。それに則って、『コードギアス』『タイガー&バニー』『ラブライブ!』が生まれてきました。『ガンダム』は大事なコンテンツですが、いつ『ガンダム』を抜くものが生まれるのか、楽しみでもあります。