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「幸せホルモン」分泌
誰かを思いやる |
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かまた・みのる 東京都出身。東京医科歯科大医学部卒。長野県の諏訪中央病院に赴任し「健康づくり運動」を推進した。チェルノブイリ原発事故の被災者支援やイラクの難民支援にも従事。現在は同病院名誉院長。「がんばらない」(集英社文庫)などベストセラー多数。66歳。
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―親子間であっても、児童虐待や介護をめぐる虐待が社会問題化するなど、人と人との関係が揺らいでいる現代こそ、「みんな1%は誰かのために生きよう」という発想が必要だと思います。
「みんな1%ずつなら、誰かを思いやることができるのではないでしょうか。科学的にも分かってきたこともあります。『幸せホルモン』とも呼ばれる脳内神経伝達物質『オキシトシン』は、誰かを幸せにしようとしたり、相手の身になる際に最も分泌されると言われています。オキシトシンは、ストレスを緩和するなど生きるために必要なホルモンと言われており、つまり、相手を思いやったりする行為が、回り回って自分を元気にしてくれます。米国カーネギー・メロン大は、年200時間以上のボランティア活動を行う高齢者と、そうでない高齢者を比較した論文を発表しています。ボランティアをする高齢者の方が、高血圧になるリスクが40%も低かったとしています」
―まさに「情けは人のためならず」の例ですね。
「福島の人たちはもともと、他人に優しく、あったかい県民性を持っています。震災、原発事故で被災し、何十%も割いて誰かのために生きるなんていう余裕はないかもしれません。震災、原発事故から3年半以上経過した今も、厳しい状況はあると思います。それでも『被災したからもう自分のことしか考えられない』と言うのではなく、優しい県民性を保ってほしい」
「誰かのために、県内のもっと大変な人たちのために、と考えて行動すれば、その人自身も救われていくのではないでしょうか。僕たち外の人間はこれからも支援を続けるし、『忘れてないよ』というサインを送り続けますが、福島の人たちも『1%だけ誰かのために』と、みんなが考えて行動すれば、もっと元気が出てくるのだと思います」
―近著「1%の力」には「優しくなくちゃ人間じゃない。楽しくなくちゃ人生じゃない」という言葉があります。
「人間は基本的に利己的な生き物だけど、誰かを考える優しさがある人の方が結果的に幸せで健康で長生きができます。人は結局、楽しむために生まれてきたのだと思います。震災、原発事故でつらい目に遭った福島の人たちが『それでも俺たちは乗り越えて、人生を楽しんでいる』という姿を見せれば、多くの人が勇気づけられることでしょう」
(2014年11月15日 福島民友ニュース)
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( 2014年11月15日付・福島民友新聞掲載 )
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