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広野町民、先に戻って「頑張る」 患者第一“赤ひげ先生”

双葉郡の復興拠点の一つとして再開発が進むJR広野駅東側

 東京電力福島第1原発から南に約22キロ、原発事故後一日も休むことなく地域医療を支えてきたのが広野町の高野病院だ。事故直後の全町避難の中でも症状の重い患者への悪影響を懸念して「避難しない」という選択をし、その命を守った。
 間もなく79歳を迎える高野英男院長は、唯一の常勤医として当直もこなす。そんな父について高野己保(みお)事務長(46)は「とにかく患者さん第一で、根っからの医者」と話す。診療科目は精神科、神経内科、内科、消化器内科だが救急にも対応。震災前は顔なじみの患者だけだったが、今では双葉郡内でけがをした作業員や具合の悪くなった一時帰宅住民、さらにいわき市からの急患が運ばれてくることもある。「院長は全て受け入れようと努力する。“赤ひげ”のような医者を目指していたのかな」
 しかし、病院の状況は楽観できない。「まだ何も終わっていないし、始めようとしても次のステップに踏み出せない。3年前よりも状況は厳しい」と高野事務長は訴える。慢性的なスタッフ不足に加え、時間の経過で震災報道も減る中で「ここに病院があることさえ知られなくなっていく。スタッフ集めがますます大変」という。
 患者本位の選択に付いてきたスタッフに感謝しているから「(病院が)倒れるわけにはいかない」と高野事務長は考え、“赤ひげ”とともに双葉郡の地域医療を守り続ける。

 スポーツクラブ・大和田さん、復興のため転職し奔走
 「町に人が戻らない理由に『これ』という明確なものはないと思う」
 広野町で妻子と共に生活しながら、総合型地域スポーツクラブ「広野みかんクラブ」のクラブマネジャーを務める大和田幸弘さん(27)は、避難している同級生や友人たちから「避難先の方が生活の便がいい」「子どもを転校させたくない」「少しでも原発から遠いところにいたい」などといった、さまざまな声を聞いてきた。「新しい生活がうまくいっている人は、広野から転出することも考えている。それは仕方のないこと」と思う。
 一方、大和田さんはより多くの人に町に戻ってきてもらうため、同クラブの事業を通じて汗を流してきた。大和田さんが同クラブに勤め始めたのは震災後。当時は町内で別の仕事をしていたが、「少しでも町の復興に関わることがしたい」と転職を決めた。
 「広野に帰っても何もない、つまらないと思われないように、少しでも帰りたいと思ってもらえるように、大会や教室を増やしていきたい」。町民の”戻らない理由”を一つでも減らすため、大和田さんは奔走する。

 子育て環境充実望む
 現在の広野町に足りないものについて、町民からは「食料品や日用品を買う店」「医療機関」を挙げる声が多く、町が昨年11月に行った町民意向調査でも同様の結果が出た。
 町内で7歳と3歳の子どもを育てる木幡尚子さん(31)は「小児科や産婦人科がなく、子どもがいる人は大変」と話し、「中高一貫校ができたら、部活動でけがをした時などに対応できるようにしてほしい」と求める。また、子どもの習い事が町内ではほとんどできないため「みんないわきに通っている。自転車で通える距離にあれば助かるのだけれど」と、子育て世代ならではの苦労を打ち明けた。農業新妻良平さん(55)は「震災前と変わらない」と話す。町内では病院も商店も再開、「買い物は震災前からいわきのスーパーを利用する人が多かった」という。「若い人や子どもたちに戻ってきてほしいから、自分たち50代が先に戻って頑張らなきゃという思いでいる。できることをやっていくだけだ」と新妻さんは力を込める。

 コメ作付面積、震災前の65%
 広野町は昨年、3年ぶりにコメの作付けを本格的に再開した。2014(平成26)年産米の作付面積は、昨年から約40ヘクタール増の約150ヘクタールになる見込みで、震災前の約65%まで回復する。しかし、町の担当者によると、原発事故で作付けをしない期間が長かったことや生産者の高齢化、後継者不足などにより、「(今年再開する生産者は)考えていたより少ない」という。昨年の同町産米の97%は、放射性物質が検出限界値未満だった。
 町は、生産者の作付け意欲を維持するため、今年は、農業経営復興の設計図となる「経営再開マスタープラン」をつくろうと、生産者たちが地区ごとに集まって意見を交わしている。
(2014年3月10日 福島民友ニュース)



 

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