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進む復旧、復興…心も前へ “震災の爪痕”忘れない教訓

進む復旧、復興…心も前へ “震災の爪痕”忘れない教訓

大規模な土砂崩れが起きた現場で当時の様子を振り返る竹貫さん=白河市葉ノ木平

 最大で震度6強を観測した本県は東日本大震災の揺れ自体での被害も大きく、大規模な土砂崩れで13人が死亡した白河市葉ノ木平地区や、死者7人、行方不明者1人の人的被害が出た須賀川市の農業用ダム藤沼湖の決壊など内陸部の中通りでも深刻な被害が出た。震災から間もなく3年6カ月。「3.11」の恐怖が住民の心に刻まれたり、深い爪痕が残る場所でも復旧、復興に向けた歩みが進み、大災害を教訓に、震災前よりさらに進んだ形での復興を模索する動きも出ている。

 【白河・葉ノ木平地区】「一人でも多く帰ってきて」 
 「一人でも多くの人に古里へ帰ってきてほしい。震災前と同じようなにぎわいが戻ることに期待したい」。白河市葉ノ木平地区の向寺自治会長で聯芳(れんぽう)寺住職の竹貫博隆さん(66)は切実な思いを口にする。大規模な土砂崩れで13人が死亡した同地区は震災後、約210世帯のうち約30世帯が減った。同地区で被災した住民も入居できる災害公営住宅が7月に着工し、竹貫さんも「復興に向けた一歩前進」と期待感を抱くが、竹貫さんはそれ以上に寂しさを感じている。震災の記憶がそうさせたのか、既に他地区に新居を構えた住民も多いからで、竹貫さんは大地震で「地域の絆」さえも奪われたことを実感している。
 震災時は今まで経験したことがないような大きな揺れで、自宅を飛び出した瞬間、寺の前にある石造りの山門が無残に崩れた。約400基あった墓は9割以上が倒れ、長い揺れがようやく収まったころ、地元の消防団員から「寺の裏山で土砂崩れが起きた」と連絡を受けた。地域の祭りを一緒に楽しんでいた知人が土砂崩れに巻き込まれ、その家族が戸惑う様子を見て「自分自身もやり切れず、いら立ちを感じた」と振り返る。
 寺では毎年3月11日に慰霊祭を行い、犠牲者の冥福を祈る。本年度中に完成する見込みの災害公営住宅には16戸が入居可能。竹貫さんは「できれば元の住民に多く戻ってきてほしい。防災拠点となる公園の建設や道路整備の計画もあり、またこの地区を一から作り直していきたい」と心から願っている。

 【須賀川・藤沼湖】「奇跡のあじさい」が結ぶ 
 人的被害に加え、家屋の流失など大きな被害があった須賀川市の農業用ダム藤沼湖は昨年11月から復旧工事が本格化、2016(平成28)年度中の新ダム完成を目指し工事が進む。そうした中、60年以上湖水に覆われていた湖底から発見されたヤマアジサイを「奇跡のあじさい」と名付け、被災住民の心を結ぼうとする取り組みも進んでいる。
 藤沼湖自然公園復興プロジェクト委員長の深谷武雄さん(69)らが中心となって株を増やし、復旧工事完了に合わせて周辺に植栽する予定。北海道から熊本県までの約300人がヤマアジサイの「里親」になっており、長沼商工会や近隣小学校もプロジェクトに協力する。深谷さんは「決壊で地域住民の気持ちはバラバラになってしまった。アジサイが絆を深めるきっかけになれば」と期待を込め、アジサイが咲き誇る藤沼湖の姿に思いをはせる。
 新ダムは17年利用開始を予定。強度が高い「中心遮水型フィルダム」を採用し、本堤、副堤ともに規模を大きくして耐久性を高める構造。周辺施設の藤沼湖自然公園は15年3月の復旧完了に向け工事が進められている。

 【白河・小峰城跡】「二度と崩れない石垣築く」 
 震災とその後の余震で10カ所計約7000個の石垣が崩落した白河市の国指定史跡「小峰城跡」では修復工事が進む。「小峰城は白河市のシンボル」と語る同市文化財課主事の松林秀和さん(32)は「先人や市民の思いをくみ取りながら、400年の歴史がある石垣を震災前と同じ形に戻したい」と誓う。
 修復工事は10カ所のうち最も被害が大きい本丸南面で昨年1月から始まった。松林さんを悩ませているのが耐震性と「見た目」の共存だ。安定した石垣を築き、耐震性を増すためには石を削る作業が必要だが、削り過ぎれば震災前の状態への復元は難しくなる。松林さんの心には、二度と崩れない石垣を築きたいという思いと、市民が慣れ親しんだ震災以前の形に近づけたいという思いが入り交じる。本丸南面の修復工事は秋に完了予定。震災前の写真と見比べたり、安定性を重視する石材店との協議など慎重な作業が続く。

 県立学校被害221億円
 県教委によると、東日本大震災の地震で県立高90校のうち79校、県立特別支援学校21校のうち15校が被害を受け、被害額は計221億1000万円(今年5月時点)に上る。また、県内の小学校509校のうち362校(昨年3月時点の被害額109億円)、中学校237校のうち185校(同58億2000万円)、幼稚園206校のうち84校(同5億5000万円)が被害を受けた。
 地震の直接的な被害を受け、仮設校舎や他施設での授業を強いられている県立高などの県立学校は2011(平成23)年度末時点で9校、13年度末には7校に減ったが、今年9月1日現在でいまだ3校が本来の校舎以外で学習している。
 このほか、原発事故の影響で仮設校舎や他施設を利用する学校は11年度末で12校、今年9月1日現在でも10校が利用を継続する。また、震災や原発事故の影響で県内の小学校21校、中学校11校が仮設校舎や他施設での学校運営を余儀なくされている。
(2014年9月6日 福島民友ニュース)



 

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