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原発災害・「復興」の影
帰れない
 
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被災者間で“溝”あらわ 津波被害、助成限定「納得できず」

被災者間で“溝”あらわ 津波被害、助成限定「納得できず」

いわき市には原発事故避難者向けの仮設住宅が点在、避難者と市民の間には埋めがたい溝が生まれている。写真は同市にある応急仮設住宅

 「原発避難者を何度殴ってやりたいと思ったか分からない」。東日本大震災の地震、津波で被災したいわき市の遠藤澄子(81)=仮名=は仮設住宅のベンチで、友人に東京電力福島第1原発事故による避難者への憤りをぶちまける。
 
 「東電仮払金で旅行」
 「避難所暮らしの時から硬い床で寝るのが嫌と言って、東電の仮払金で旅行に行っていた」「賠償金で高い食品ばかり買うため、スーパーの刺し身が高くなった」。これが遠藤にとっての原発事故避難者像だ。
 遠藤は、応援でいわきに入ったどこかの自治体職員から「こんなところにいては危ない」と言われ、自宅から公民館の避難所に移った。しかし、住めないはずの家は「半壊」認定。家が「全壊」とされた被災者に比べ、行政の助成も限定的だった。精神的賠償の月10万円などといった原発事故避難者への支援に納得がいかない。プレハブ造りの仮設住宅で避難生活を送っている自身の境遇への不満が、原発事故避難者への憎しみに形を変えている。
 避難者2万人超を受け入れる同市。市役所にも市外からの避難者への苦情が寄せられる。「病院や道路が混む」「ごみ収集や水道などを“ただ乗り”している」
 一方、大熊町から同市に避難している青山和人(61)は「本当に悔しい。いろんなものからばかにされてる」と語る。市民から歓迎されていないと肌で感じている。持病の診療のため訪れた同市の病院で医師から「あんたらがいるから病院が混む」とはっきり言われたこともあった。
 「狭い仮設に押し込められてストレスもたまる。パチンコをしたくもなる。あんまり派手にやるなよとは思うけど」。言葉には次第にとげが混じる。「津波被災者はいい。好きな時に被災地に行って『ここに家があったよね』なんて思い出に浸り、涙も流せる」
 青山の自宅は福島第1原発から2.8キロ。帰還困難区域の大熊町小入野地区だ。津波被害はないが、家の中にネズミの死骸が転がっている。空間放射線量は屋内でも毎時7マイクロシーベルトを超える。帰りたいけど、帰れないのも分かっている。いわきでは昨年末、「被災者帰れ」との落書きが複数見つかった。そう言われても帰る場所すらないことが、青山には「悔しくてたまらない」。
 
 「腹を決める」時期に
 県民の間に生じている不幸な対立を前に東日本国際大教授の福迫昌之(46)=地域社会論=は「市民の帰るまでの一時的な受け入れ、避難者の帰るまでの一時的な避難という意識では距離は縮まらない」と分析。避難者を市民として受け入れる、避難ではなくいわきに住み続ける―と、それぞれ腹を決める時期に来ていると指摘する。(文中敬称略)

(2013年9月14日 福島民友ニュース)



( 2013年9月14日付・福島民友新聞掲載 )
 

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