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原発災害・「復興」の影
帰れない
 
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被災者“我慢も限界” 危機感…「みんな、心がダメになる」

被災者“我慢も限界” 危機感…「みんな、心がダメになる」

同じ境遇の避難住民たちが励まし合ってきた生活も2年6カ月を過ぎ、ストレスがたまり続ける。写真は会津若松市にある応急仮設住宅

 「この野郎っ」。今月8日夜、会津若松市東山町のホテル。帰還困難区域とされた大熊町のある地区からの避難者が集った懇親会の終盤、同市の仮設住宅で避難生活を送る60代後半の男性が、東京都に避難する60歳前後の男性に殴り掛かった。仲裁に入った男性の顔に手が当たり、眼鏡が飛んだ。
 東京にいる男性は東京電力福島第1原発事故の直後、東電社員の息子と共に避難し、現在に至る。「事件」は、その男性が「息子が外国製の高級バイクを買った」と自慢げに語った時だったという。
 会津若松の男性は、今も第1原発で作業員として事故収束作業に当たる多くの知人を思い、激高した。「何が高級バイクだ」

 仮設でも一触即発
 駆け付けた警察官は南相馬市でも避難者同士のけんかがあったことを明かし、なだめたという。「自分も皆さんの気持ちは分かる。でも、けんかはダメだ」
 現場にいた同町の橋本昭恵(57)=仮名=は、危機感を強めた。「避難生活で疲れ切り、身近な人に鬱憤(うっぷん)をぶつけている。みんな、心がダメになっていく」。橋本は、いわき市小名浜にある同町の仮設でも、けんかがあったと知人から聞いていた。ささいなことから若者が中年の女性の髪をつかみ、一触即発の状態になったという。
 原発事故から2年6カ月。避難者と受け入れ側市民の確執だけでなく、避難者同士のいがみ合いも目立ち始めた。橋本は思う。「町に帰れるのか帰れないのか、国も町もはっきり言わないから、先の見えない生活を送る避難者の精神状態は限界に近づいている」
 11日午後、福島市の県文化センター。復興庁が開いた「子ども・被災者支援法」基本方針案の説明会の会場に、橋本の姿があった。

 国への失望隠さず
 会場からは「もっと避難者の声を聞いて決めてほしい」という声が相次いだが、同庁担当者は「パブリックコメント(意見公募)の募集期間は十分確保した」などと不十分な答弁に終始した。「避難者はもう限界なのに。怒りを通り越して、あきれる」。橋本は国への失望を隠さなかった。
 「ヤジはやめていただいて。不規則発言はやめていただいて」。終盤、質問打ち切りで騒然とする中、復興副大臣の浜田昌良(56)の言葉がむなしく響いた。
 帰るか、帰らないか―。避難者は、その判断からはるか遠い所に置き去りにされている。(文中敬称略)

(2013年9月15日 福島民友ニュース)



( 2013年9月15日付・福島民友新聞掲載 )
 

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