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原発災害・「復興」の影
帰れない
 
【 3 】
将来も産業は「廃炉」 原発に代わる“働く場”見つからず

将来も産業は「廃炉」 原発に代わる“働く場”見つからず

国道6号の富岡町ゲートの朝。帰還困難区域の中に向かって、原発作業員らが続々と通過していく

 「新しい安全な産業はないし。福島第2原発が再稼働でもすれば活性化するのかな」。富岡町からいわき市に避難している原発作業員大場清衛(43)=仮名=は、冗談めかして言う。
 東日本大震災のあった2011(平成23)年3月11日、大場は福島第1原発の中にいた。作業員は全員点呼の後、解散。「2、3日もしたら、また戻って、後片付けをしなければならないのかと気が重かった」
 実際に原発に戻ったのは3月下旬。初めは作業員の業種に関係なく人海戦術。その後は細切れの作業と長い待機の繰り返し。「ビスケットが運ばれてきて『食事の時間なのか』と知った」。そんな状況に嫌気が差して消えた仲間も多い。

 受けてきた「恩恵」
 大場は事故から数カ月後、累積被ばく線量のこともあって現場を離れた。ただ、今も廃炉作業の下請け会社に勤めていて、原発への嫌悪感はない。原発立地町に限らず、双葉郡住民の多くが受けてきた原発の「恩恵」を知っているからだ。
 先日、停止中の敦賀原発(福井県敦賀市)のそばに所用で行って驚いた。「駅前はまさにシャッター街。原発で成り立っているところは本当に多いんだ」と思った。
 富岡町は今年3月の避難区域見直しで3区域に再編され、人口の約7割を占める地区で日中の出入りが可能となった。しかし、大場は、町民が将来的に帰るのか、疑わしいとみている。理由は原発に代わる産業が見当たらないからだ。町の復興計画は帰還に重点を置いているが、具体性に乏しい。「仕事もない中で、町が『帰る』と掛け声を発するのはパフォーマンスだ」

 脱原発に冷めた目
 事故後の反原発運動については「偉い学者もいるし、それなりの根拠があるのだろう」と思っている。しかし、富岡で育った大場には原発が雇用、生活を支えてきた面を切り離しては考えられない。「どこまで考えて反対しているんだか」と冷めた目で見てしまう。
 福島第2原発をめぐっては県が廃炉を求めており、再稼働は現実的ではない。一方、インフラ整備と同様に帰還に不可欠な働く場の議論は、深まっていない。
 大場は、帰還を進めるための産業について「やっぱり廃炉しかない」と語る。「これから数十年、仕事が見込める廃炉を、企業は絶対に手放したくないから、技術を持った作業員は必要になる。国などが技術者のためのトレーニングセンターを造る必要が出てくるはずだ」。(文中敬称略)

(2013年9月16日 福島民友ニュース)



( 2013年9月16日付・福島民友新聞掲載 )
 

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