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原発災害・「復興」の影
帰れない
 
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生活再建“弾まぬ心” 賠償金で…他人の目気にし家新築

生活再建“弾まぬ心” 賠償金で…他人の目気にし家新築

原発事故の避難者には東京電力から、賠償金請求書などが数カ月に一度、郵送で届く

 富岡町から郡山市に避難する山本寛子(35)=仮名=が住む借り上げアパートの郵便ポストには、工場勤務のためいわき市に離れて暮らす夫(35)宛ての郵便物が届く。山本は毎週末、いわきに会いに行くときにそれを渡す。

 避難者とばれちゃう
 「東京電力から(賠償請求などA4判の書類が入る)大きな封筒が届くと、ポストからはみ出て原発事故の避難者とばれちゃうから」。いわき市で市民と原発事故避難者のあつれきがあることは、時々訪ねるだけでも何となく分かる。
 山本は原発事故後、南相馬市や田村市の避難所を転々とした。「既に順番待ち」と町職員から言われ、慌てて借り上げアパートを申し込んだ。建設業から製造業に転職した夫はいわき市で仕事を続けた。夫の元へ行きたかったが、郡山市の仮設住宅に住む父(67)が脳梗塞で入院したため、同市に残った。日中は仕事、夕方は父の病院に通う。
 山本は夫のいるいわき市に新居を建てたいが、元手が足りない。例えば富岡町で120坪(約400平方メートル)の土地と築35年の家だと財物賠償は500万円程度という。友人に「東電が120坪の土地だけ用意してくれたら」と愚痴ると、「いわきでそんなぜいたくは夢物語」と叱られた。
 浪江町から郡山市に避難した田島翔子(45)=仮名=は4月に家を建てた。賠償金に貯金を加えて購入費に充てた。浪江の家のローンは払い続けている。浪江では家族5人で50坪の家だったが郡山では35坪。それでも2500万円かかった。
 木のにおいが残る家には新品の家具が並ぶが、心は弾まない。「持っているものが新品ばかりだと、高級品はないのに『賠償金でいいものを買っている』という目で見られている気がする」
 郡山市の高校に通う長男が同級生から「賠償金もらっているんだろ」とからかわれたと聞いた。「帰れないなら、市民になるしかない」と割り切り、新居への入居と同時に同市に住民票を移した。古里への愛着は残るが「本籍は浪江のまま」と自身を納得させた。

 現実直視していない
 事故から2年6カ月が経過し帰還の見通しも立たない中、避難者の生活再建の方法は多様化しつつある。この事態について、福島大行政政策学類准教授の荒木田岳(43)は「行政、東電は現実を直視していない。自主避難者を含め、まず避難生活の多様化をきちんと認めることが先決だ」と警鐘を鳴らす。(文中敬称略)

(2013年9月20日 福島民友ニュース)



( 2013年9月20日付・福島民友新聞掲載 )
 

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