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原発災害・「復興」の影
炉を廃する
 
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現場に絶えない人的ミス より怖い東電の「技術力の低下」

現場に絶えない人的ミス より怖い東電の「技術力の低下」

福島第1原発の廃炉に向け、現場で働く作業員。相次ぐ人的ミスは課題の一つだ

 東京電力福島第1原発で人的ミスによるトラブルが絶えない。9月以降だけでも傾いた地上タンクに容量を超える水を移送したり、淡水化装置の配管を誤って外すなど、あり得ないような単純ミスが続いている。

 技術者いれば大丈夫
 「技術者から見たら、大規模な現場で線量を気にしながら作業をすれば、人的ミスは当然起きる」。東大工学系研究科機械工学専攻教授の中尾政之(55)は、一般的な建設工事と比べ制約が多い現場にしては「作業が進んでいる」と感じている。人的ミスは避けられないものの、「東電に優秀な技術者が大勢いるうちは大丈夫」と言い切る。
 中尾は、不祥事や事故を分析し、ミスを繰り返さない方法を考える「失敗学」が専門だ。震災前から福島第1原発など国内外の原発トラブルを調べてきた。
 その中尾が今、問題視しているのは、事故後の東電や原子力について議論がしにくい雰囲気だ。「東電について話をしようとすると、東大は(原発推進の)“原子力ムラ”だから、まずは(国民に)謝れ、となる」。このような状況では原子力を学ぶ学生は減り、東電の技術力も低下する恐れがあるとみている。廃炉には30〜40年はかかるとされる。「知識がない人が原子力に関わったときこそ、どんなミスが起きるか分からない」
 ミスの連続は9月に始まったのではない。4月にも誤操作で水処理装置が停止するなどのトラブルはあった。しかし、海にまで汚染水が放出される危機的状態の中でミスが相次ぎ、原子力規制委や国民は「東電に廃炉ができるのか」と疑いを強めることになった。

 示されぬ不安解消策
 「手順書がどうのとか、連絡がどうのとかで済む状況ではない」。東京で16日開かれた原子力規制委の定例会。委員長の田中俊一(68)=福島市出身=は東電が示したミスの防止策に対し不満げな表情を浮かべた。東電は「エラー撲滅に強い意志を持つ」「作業手順書の作成」などを掲げたが、田中は「もう少し深い根っこがあるのではないか」と指摘。原子力規制庁長官の池田克彦(60)も「(現場管理能力の検証を求めた)こちらの趣旨を矮小(わいしょう)化している」と、田中に歩調を合わせた。
 長期的な技術者離れを心配する、あるいは技術者を管理する能力不足を嘆く議論。しかし、原発事故の脅威に2年7カ月以上さらされた地元被災者たちが求める、目の前の不安を解消してくれる策は、まだ示されないままだ。(文中敬称略)

(2013年10月31日 福島民友ニュース)



( 2013年10月31日付・福島民友新聞掲載 )
 

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