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汚染水対策「トリチウムは海へ」 学会事故調「希釈される」
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試運転を続ける多核種除去設備(ALPS)。汚染水対策の「切り札」とされるが、トリチウムだけは除去できない=9月、福島第1原発
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東京電力福島第1原発の廃炉をめぐり、いまだ未解決の技術的問題は数多い。溶融燃料の取り出し方法などと並び今後の大きな壁となるのは、水と性質が近い放射性物質「トリチウム(三重水素)」の扱い方だ。
第1原発で試運転を続ける多核種除去設備(ALPS)。62種類の放射性物質を取り除く汚染水対策の「切り札」とされるが、トリチウムだけは除去できない。増え続ける汚染水は、現状ではALPSで処理しても「汚染水」のまま。政府は除去技術の国際公募に踏み切った。
環境の濃度と「同じ」
そんな中、日本原子力学会が原発事故を受け組織した事故調査委員会(学会事故調)は「トリチウムは汚染水から除去するのではなく、薄めて海に流す方が妥当」との提言をまとめた。
提言について、学会事故調委員を務め、30年以上にわたりトリチウムを研究する京大エネルギー理工学研究所教授の小西哲之(56)は「除去すると、高濃度汚染水を現場で保管する必要が生じ、不測の事態で漏れる危険性を抱えることになる」と説明する。
トリチウムは環境中に存在し、濃度は水1リットル当たりおよそ1ベクレル。人体にも50〜100ベクレルある。小西は、第1原発から放出し海中で希釈すれば環境の濃度と同程度にすることは可能だと言い、こう続ける。「トリチウムが人間に与える影響がより少ない手法は何か。そういう発想に基づく提言だ」トリチウムの海洋放出をめぐっては9月、廃炉の研究開発を担う国際廃炉研究開発機構に対し海外専門家グループも「やむを得ない」と助言している。
求められる説明責任
小西は「海に流すにしてもタンカーで遠くに運んで捨てる手法など選択肢は多い。最終的に決めるのは福島の人たちだ」と強調。東大大学院教授で学会事故調委員長を務める田中知(さとる)(63)も「風評被害の懸念があり、トリチウムの海洋放出については学会が説明を尽くし理解を得る必要がある」と指摘する。
小名浜水産加工業協同組合(いわき市)の組合長を務める小野利仁(56)は、将来的にトリチウムを含む水を海に流す場合は、政府が説明責任を果たすべきと考える。「東電ではなく政府が影響を調査し、安全を確認した上で漁業者に了解を求めることが条件だ」
除去か、海洋放出か―。長く続く廃炉の過程では、県民が難しい判断を迫られるケースが出てくる。(文中敬称略)
(2013年11月5日 福島民友ニュース)
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( 2013年11月5日付・福島民友新聞掲載 )
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