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原発災害・「復興」の影
貯蔵する
 
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施設めぐり“しこり” 中間貯蔵施設、双葉郡「決定なのか」

郡山市で行われている住宅除染。汚染された土壌などは中間貯蔵施設の搬入開始まで、住宅敷地内に保管される

 「第1原発周辺国有化」。23日のいくつかの新聞は、政府が中間貯蔵施設の用地と緩衝地帯を合わせ、福島第1原発周辺の約15平方キロを国有化する方針を固めたと報じた。養蜂業をしていた双葉町から郡山市に避難する小川貴永(43)は新聞を読んで「受け入れの流れはもう決まったのだ」と思った。
 原発事故以降、自分たちに密接に関わる問題を新聞で初めて知り、後から正式発表されるというパターンはこれで何度目だろう。環境省はホームページで報道を否定してみせたが、与党が本県の復興加速に向けた提言を示して以降、政府は復興への取り組みのアピールを強めている。
 小川は「(同省が)否定しているのはおそらく、“正式には”決まっていないという意味。政府が報道を通じて反応を探っているのでは」と推測した。3町はまだ、設置に向けた調査を受け入れた段階のはずだが、設置決定への流れは既に最終局面に近づいているかのようだ。

 いやだと言いにくい
 「『おまえらはいいよ。金もらって遊んでいられて』なんて言われても、除去土壌を受け入れないといけないのか」。大熊町から会津若松市に避難する高瀬重子(65)の家は施設の設置調査の範囲内にある。高瀬も「設置は避けられない」と思ってはいるが、いつの間にか町への設置が決まったかのような雰囲気には釈然としない。設置を受け入れる前から、新聞には土壌を運ぶ経路まで掲載されている。「避難を受け入れてもらった自治体には恩もある。(施設が)いやだとは言いにくい」と、高瀬は言う。
 「原発近くに持っていってもらうしかない。原発に近い人はあきらめてもらうしかない」。郡山市郊外の農村地帯。遠藤隆詔(67)は、自宅裏の表土を作業員らが慣れた手つきではがしていくのを見ながら、遠慮がちに言う。一緒に暮らす孫たちのことを考えれば除染は不可欠だ。土は中間貯蔵施設に早く持っていってもらいたい。
 同市で除染が必要な家屋は約10万4000戸。除去土壌が大量となるため仮置き場を用意できない。土壌はそれぞれの家で穴を掘って埋める。同施設の利用開始後、あらためて土壌を掘り出して施設に運び込む算段だ。

 胸は痛むが別の問題
 環境省は施設への除去土壌搬入開始を2015(平成27)年1月としているが、土地取得などの手続きは3町や県が設置を認めて初めて可能となる。このため「本当に再来年には持っていってくれるのか」(遠藤)との声は多く、同市は10月、同省に計画通りの搬入開始を実現するよう要望書を出した。要望をまとめた市担当者は「避難者のことを思うと胸は痛むが、それと搬入の問題は別」と説明する。
 「『早く(設置を)決めろよ』という無言の圧力を感じる」。大熊町長渡辺利綱(66)は26日、福島市で開かれた意見交換会で、知事佐藤雄平(65)に漏らした。汚れた土を運び込む側と受け入れる側が県内に混在する状況が、避難者の胸に新たなしこりを生んでいる。
(文中敬称略)

(2013年11月29日 福島民友ニュース)



( 2013年11月29日付・福島民友新聞掲載 )
 

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