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お金の話でいさかい 避難者間に横たわる賠償などの格差
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県外避難者が集まる交流会などは全国にあるが、お互いに賠償金の話などは避ける傾向にある
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「原発事故で避難した同士なのに、お金の話でいさかいばっかり」。いわき市から東京都に避難する元准教授鴨下祐也(45)は、妻(43)の言葉をうなずきながら聞いた。妻は続ける。「経済的支援が少ない自主避難者は、本当に責任を追及されるべき国や東電が遠くにいる。だから、近くの強制避難者のお金や高級な持ち物ばかりが気になってしまう」
妻は先に避難し、鴨下が1年前にいわき市での仕事を辞めて東京に移るまで、1人で2人の子どもを育ててきた。
妻は「子どもに避難生活をさせているという罪悪感しかなかった。周囲の自主避難者も同じ。耐えられず誰かを非難、批判したい気持ちも理解できた」と打ち明ける。鴨下は「妻は明確な避難の根拠が持てず、漠然とした不安しかない。つらかっただろう」と振り返る。
「交流会で賠償金の話をするのはご法度。避難の形はいろいろあるから。それなのに…」。浪江町から宇都宮市に避難する吉田尚史(35)は嘆く。「原発事故から3年近くたち、いつの間にか日常の生活でお金のことばかり気にしている」
吉田が世話役を務める避難者同士の交流会には、双葉郡を中心とした強制避難者だけではなく、中通りや宮城県からの自主避難者もいる。強制避難者は、自主避難者より賠償や支援が格段に厚い。自主避難者でも本県からの避難者は住宅が借り上げとなるが、他県からの避難者は補助がない。「お金の話が出始めたら、もう交流会は開けなくなる」
出費かさむ二重生活
交流会で知り合った自主避難者たちの境遇は「避難者という立場は同じなのに大変だ」と吉田は思う。母子避難者は二重生活で出費がかさむ。3月までとされる借り上げ住宅の入居延長がまだ決まっていない受け入れ自治体もある。「強制も自主も避難にお金がかかるのは一緒。生活支援だけは強制避難と一緒にしてあげないと、あつれきは避けられない」
東京に避難した鴨下は、もともと東京出身だが、自然と触れ合えるいわき市が気に入っていた。家も買い、骨をうずめるつもりだった。その意味では「古里を失った強制避難者と置かれている境遇は同じだ」と考えている。それなのに、国が空間放射線量という条件だけで線引きしたために立場の違いが生じてしまった。
鴨下は訴える。「原発事故も公害と一緒で(被害の有無や範囲など)本当のことが分かるのは20年後、30年後。同じ避難者としてお互いのつらさ、悲しさを共有していかなければならないはずだ」(文中敬称略)
(2014年1月6日 福島民友ニュース)
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( 2014年1月6日付・福島民友新聞掲載 )
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