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「兵糧攻め」苦境訴え 自主避難、公平性保つ支援に難しさ
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県米沢市で開かれた「10円バザー」。自主避難者らでごった返し、おむつなどの生活用品が瞬く間になくなった
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「春からは今まで以上に生活を切りつめないと」。桑折町から山形県米沢市に自主避難する国嶋真弓(31)は、4月の消費税率引き上げにため息をつく。
消費増税…募る不安
2012(平成24)年4月に子どもと避難し、夫を残しての二重生活。光熱費はかさみ、灯油は桑折では18リットルを1度買えば1カ月もったが、寒さの厳しい米沢では月に2、3度買う必要がある。「増税を機に『もう避難生活は続けられない』と考える人は増えるのでは」
12年6月、原発事故に伴う避難者らを援助する子ども・被災者支援法が成立。昨年10月には法の基本方針も閣議決定されたが、「何も変わっていない」(国嶋)。経済的理由から帰還を選ばざるを得ないケースも出ていて、自主避難者からは「『兵糧攻め』を受けているようだ」との声が上がる。一方、自主避難者向けのボランティア活動も続いており、同市は支援が手厚い地域の一つだ。
「混み合っています。お子さんに気を付けて」。昨年12月、同市で支援団体が開いた「10円バザー」。自主避難者らで混雑する会場にスタッフの声が響いた。生活用品を原則10円で避難者に販売するバザーで、定期開催されている。子どもを抱える家庭向けにおむつなどが並んだが、すぐになくなった。
「自分で避難を選んでここにいるのだから、こうしたバザーが開かれなくなっても不満は言えない」。妻や子どもとともに同市に避難する本田和希(27)はそう語った上で、県民の思いを推測する。「こちらではさまざまな支援のイベントがあるし、家賃も無料。避難していない人は『ずるい』と感じているだろう」
大きく異なる境遇
同法は避難者、避難していない人の双方について「いずれを選択しても適切に支援しなければならない」とするが、境遇は大きく異なる。帰還者が増え自主避難者がより少数派になるにつれ、県内にいる人との公平性を保ちながら支援を講じるのは難しくなっていく。
茨城県で自主避難者らの支援に当たる茨城大人文学部准教授の原口弥生(41)=環境社会学=は、避難者が帰還を決める場合、複数の選択肢の中から自分の意思で選び取るという過程が重要だと指摘する。
昨年12月に福島大で開かれたシンポジウムで、原口は述べた。「帰還以外の選択肢を奪われた無力感は、福島に戻った後の生活に暗い影を落とすことになるかもしれない」(文中敬称略)
(2014年1月7日 福島民友ニュース)
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( 2014年1月7日付・福島民友新聞掲載 )
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