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原発災害・「復興」の影
自ら逃れる
 
【 10 】
帰還か移住か迷う親 それぞれの避難者の決断に支援を

 「子どもが安全を確信できるまで、帰りたくはないが」。郡山市に夫(39)を残し、東京都に避難する女性(38)は迷っている。東京に避難して2年10カ月。近所に住む子育て世代の友人も増えた。長男(6)は夕食時に、東京で通い始めた塾の話をする。しかし、夫と離れた二重生活の負担は限界にきているようにも感じる。
 「帰るか、帰らないか、朝起きるたびに考えが変わる」。避難先のアパートには組み立て式の安価な収納棚が並ぶ。いつ郡山に帰ることになっても、すぐ処分できるように高い家具は買わない。「こういうところが避難者なんだ」と思う。長男は今、小学1年生。帰るなら「今しかない」と最近思うようになった。「転校させるなら、友達と別れにくくなる前の方がいい」

 「今はここが居場所」
 一方、女性と避難後に知り合った31歳の女性は、福島市から東京都武蔵野市に夫(46)、2〜6歳の3人の子と一緒に避難している。子どもが成人するまで東京に住むつもりだ。「子どもをかわいがってくれたり、子育てなどを相談できる多くの人に出会った。今はここが自分の居場所と感じている」
 東日本国際大経済情報学部教授の福迫昌之(46)=地域経済論=は「『避難』は特殊かつ短期的。恒久的なものではいけない。福島に戻らないと決めたなら避難先のコミュニティーに溶け込んで働き、暮らすという生活者の状態に変えることが必要」とする。

 根付けなければ難民
 行政の現在の施策は、住宅借り上げの延長など「避難の状態を維持する支援」にとどまっているとした上で、「この先、支援が打ち切られたら、避難先に根付けない避難者は難民になるしかない」と指摘する。
 今後は県内に住む人、帰還する人、避難先に移住を決めた人それぞれが自立して生活できるための支援に、転換すべきだと福迫は考えている。「帰ってくる人にも、移住を決断した人にも就労や子育てを支援し、避難者から脱して、生活者に導くことで住民は新たなスタートが切れる」
 女性も、いつまでも避難者のままでいてはいけないと思う。帰還するなら今だが、本当に戻っていいのかとの思いもある。どちらにいるのが自分や子どもにとって幸せなのか、正直まだ分からない。「帰っても帰らなくても、自分が選んだと胸を張って子どもに言えるようにしなければならない」と思っている。(文中敬称略)=「自ら逃れる」おわり

(2014年1月12日 福島民友ニュース)



( 2014年1月12日付・福島民友新聞掲載 )
 

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