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原発災害・「復興」の影
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甲状腺検査が生む“不安” 母親「がん可能性ゼロでない」

甲状腺検査が生む“不安” 母親「がん可能性ゼロでない」

首に検査器を当てて行う甲状腺検査。現段階で見つかっているがんは「原発事故の影響とは考えにくい」とされている

 「こっちは一生のこと。あの人たちは、福島の子どもが、がんになるかもしれないという危機感はあるんでしょうか」。二本松市で2人の子どもを抱える会社員安斎牧子(36)は、一昨年に受診した県の甲状腺検査を思い出しながら言う。検査担当者には不信感しか残らなかった。

 担当者に質問できず
 同市の公共施設に設けられた検査室。当時2歳の次男は見知らぬ大人が行き交う部屋の雰囲気を怖がり、泣いて暴れた。技師らは次男の体にバスタオルを巻き付け、動けないようにして首に検査器を当てた。検査は10秒ほど。安斎は「こんな検査で大丈夫なのか」と聞きたかったが、事前に担当者から「何も答えられない。何も聞かないで」と言われていたので、質問できなかった。
 次男には、がんに結び付く可能性があるとされるしこりなどは見つからなかった。しかし、当時5歳の長男は小さな嚢胞(のうほう)(液体が入った袋のようなもの)が見つかり、A1、A2、B、Cの4段階でA2の判定を受けた。A2は経過観察で追加検査はない。2次検査対象となるB判定との違いは、甲状腺のしこりの大きさのみ。安斎はその後、県外の病院で検査を受けさせると次男も嚢胞が見つかった。

 甲状腺「経過観察」46%
 原発事故当時18歳以下で、県内にいた子ども約33万人を対象とした甲状腺検査。昨年末までに約25万4000人分の判定が確定、約1800人が血液や細胞などを調べる2次検査に進み、75人が「がん、またはがんの疑い」と診断された。
 A2判定は全体の46%を占める。「しこりがある」と言われたまま2年後の次回検査を待つ。
 甲状腺検査を含む県民健康管理調査の検討委員会で座長を務める県医師会常任理事の星北斗(49)は「正直に言うと、このがんは(検査がなければ)20歳、30歳にならないと見つからない。症状が出てからでも治療できる。それが子どもの時に見つかって切除する、しないの話になる。がんがあると考えながらの10年と、そうでない10年とでは気持ちの面で違う。そういう不安を生む面が、この調査にはある」と指摘する。

 「影響考えにくい」
 チェルノブイリ原発事故でみられた甲状腺がん増加は、本県でも起こるのか―。これまで見つかったがんについて検討委は「事故の影響とは考えにくい」という見方だ。しかし、自分の子どもが放射線でがんになる可能性はたとえ小さいとしても、母親たちは「可能性はゼロではない」と感じ、不安になっている。
 子どもがA2判定を受けた福島市の主婦武藤恵(40)は不安をこうたとえる。「弾が1発入った拳銃で『1000回に1回しか弾は出ません』と言われても、拳銃の前に子を立たせる親はいない」(文中敬称略)

(2014年3月1日 福島民友ニュース)



( 2014年3月1日付・福島民友新聞掲載 )
 

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