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原発災害・「復興」の影
風に惑う
 
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基準値超…消えぬ不安 全袋検査も苦悩続くコメ生産農家

基準値超…消えぬ不安 全袋検査も苦悩続くコメ生産農家

自宅のもみ乾燥機を見上げる門馬さん。原発事故後は一度も使っていないが、メンテナンスは欠かせない=南相馬市鹿島区

 「絶対に大丈夫だというなら再開する。でも、もし基準値を超えるコメが出てしまったら、この地区全てのコメが消費者から敬遠されてしまう」。南相馬市鹿島区の専業農家、門馬弘一(72)は、原発事故から3年以上たつ今も、本格的な稲作を始められない悩ましい思いを打ち明ける。
 原発事故後、稲作を自粛してきた同市は今年、避難区域を除く地域で本格的に再開するが、意欲的な農家はごく少数にとどまっている。背景の一つとして、同市で昨年、食品の放射性セシウムの基準値1キロ当たり100ベクレルを超えるコメが見つかったことがある。「ため池、水路の除染はまだこれから。骨を折ってコメを作った揚げ句、汚染されていると言われてしまってはなあ」。門馬は、原発事故後は一度も使用していないもみ乾燥機を見つめながらつぶやいた。

 「全国一安くなった」
 基準値を超えるコメが出荷されないよう、本県が世界で初めて取り組んでいる「全量全袋検査」。県によると、全量全袋検査した2013年産米1095万点のうち、基準値を超えたのは28点で、0.0003%にとどまる。しかし、農家の苦悩はやまない。
 「福島のコメは原発事故後、全国で一番安いコメになってしまった。もう、価格が元に戻ることはないだろう」。会津坂下町でコメの生産から流通まで手掛け、約7割を県外市場に出している猪俣泰司(63)は風評被害の現状を明かす。

 会津もひとくくりに
 福島第1原発から距離がある会津地域では、全袋検査で基準値超えは一つもなかった。だが、猪俣は「関西などでは会津が県内のどこに位置するか分からない人が多い。県内のコメが基準値を超えれば『福島のコメからまた出た』と、会津もひとくくりにされる」と言う。
 全袋検査が続く限り、県内のどこかで基準値超えのコメが出るのではないかという不安も続く。猪俣は、避難区域など今は作付けしてない地域も、避難解除などに伴い再開していくことを踏まえ指摘する。「基準値超えのコメが全く出なくなれば全袋検査はやめることができるだろう。でも、果たしてそんな日が来るだろうか」(文中敬称略)

(2014年3月30日 福島民友ニュース)



( 2014年3月30日付・福島民友新聞掲載 )
 

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