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本県支援しぼむ機運 果樹農家、原発事故風化に危機感
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福島市の果樹園でリンゴ狩りを楽しむ観光客。農家からは風化を懸念する声が上がる=2013年11月
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「『福島を助けよう』という機運は今後急速にしぼんでいく。その一方で、原発事故被害が深刻さを増すのは、これからだ」。果物の生産、販売に取り組む福島市の片平新一(60)は、風評被害と並行して県外で進む原発事故の風化に危機感をあらわにする。
事故で放出された放射性物質は「果物王国ふくしま」に深刻な打撃を与えた。だが片平は「直後の2011(平成23)年度の売り上げは前年の8割以上を確保していた」と言う。企業や個人が復興支援目的で果物を買ってくれた。「食う食わないは別だよ」。購入の際、そう告げる人もいた。ある時、期間限定で福島の果物を扱ってくれた都内の大手百貨店に、果物をカタログに載せてほしいと頼むと、丁重な断りの連絡がきた。「応援」は一過性のものでしかないと実感した。
負のイメージが心配
事故の風化が進み復興支援の機運が薄れる一方で風評が改善しなければ、負のイメージが県外で定着してしまう恐れがある。同市で贈答用サクランボなどを手掛ける紺野繁勝(68)も「もう3年。何か手を打たなければいけないと思うのだが、どうすればいいか分からない」と焦る。直接販売の顧客の中心は高齢者。「一度離れた県外の顧客が、戻ることなく世代交代していくのを黙って見ていることしかできないのか」
行政の認識に疑問符
現状打破のため、片平は畑の表土除去が必須だと考えている。放射性物質が降り注いだ土を取り除くことができれば、果物の安全性をPRする際の有効な説明材料になるからだ。
だが、表土除去は福島市で試験的に一部が行われたのみで、行政側から危機感は伝わってこない。片平には、事故対応の経費をなるべく抑制したい国が、セシウムが減衰して除染対象となる基準を下回り、地元で事故が風化する日まで「時間稼ぎ」をしているだけとすら映る。「『福島のやつらはばかだから、5、6年もたてば忘れる』くらいにしか考えてないんだろう」
風化が進む一方で対策は講じられず、片平の心は閉塞(へいそく)感に締め付けられる。「ただセシウムがなくなるのを待つだけの人生は、苦痛でしかない」(文中敬称略)
(2014年3月31日 福島民友ニュース)
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( 2014年3月31日付・福島民友新聞掲載 )
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