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「賠償未請求」実態分からず 認知症などの救済が課題
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県弁護士会、日本障害フォーラムなどが開いた障害者向けの賠償学習会。障害者、高齢者らの未請求の実態はいまだ不明だ=2012年8月
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「請求の仕方が分かんねえ」。2012(平成24)年秋、相馬市の仮設住宅。南相馬市小高区から避難する天野博史(41)は、仮設の組長として訪問活動を行った際、東電に賠償請求する意思のない高齢者が仮設に多くいることに驚いた。手続きの煩雑さなどを理由として話していた。
「賠償についての説明会を仮設で開いても顔を出さず、『年金で生活できている』と言われてはそれ以上どうすることもできなかった」と天野は振り返り、「今も未請求のままなのだろうか」と心配する。
原発事故当初の仮払いの賠償金さえ請求していない人の数は、東電と市町村が特定作業を進めているが、いまだ判明していない。
無理強いできない
「請求しないと決めた人に無理強いはできないが、果たして適正な情報に基づいてそう判断しているのか、注意する必要がある」。未請求問題に取り組む県弁護士会白河支部の弁護士湯坐聖史(ゆざきよふみ)(43)はそう問題提起する。「加害者である東電からの情報だけでは、これだけの被害を受けたにもかかわらず救済が不十分、というケースも出てくる」
高齢者や障害者など、認知症や障害のために権利意識を持つことができないケースも心配されている。
被害自覚ない人も
未請求者問題をめぐっては、時効で賠償を受けられなくなる事態を防ごうと、時効を10年に延長する特例法が国会で成立しているが、湯坐は「知的障害のある人などは、そもそも自分が原発事故で被害を受けたという自覚さえないケースもある」と言う。
同会は未請求者の「掘り起こし」などを目的に、日本弁護士連合会、日本障害フォーラムと連携して賠償に関する障害者向けの学習会も開催している。
天野には、行政の対応が不十分と思える。「行政は、復興住宅の建設場所に関して住民が注文を付けると『皆さんは賠償金をもらっているんだから好きな土地に住めるでしょ』とか平気で言う。未請求の実態が分からないにもかかわらずだ」と明かし、こう続ける。「請求しないまま亡くなり、忘れ去られてしまうことだってあるだろう。それを、『請求しなかったのが悪い』ってことで片付けてしまっていいのか」(文中敬称略)
(2014年4月30日 福島民友ニュース)
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( 2014年4月30日付・福島民友新聞掲載 )
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