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「加害者が決めるな」 東電、賠償支払い指針を“骨抜き”に
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富岡町の居住制限区域の商店街に、人影はない
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東京電力は2月、原発事故の影響で働けなくなったり、収入が減ったりしたことで生じた損害の一律賠償を、あと1年で打ち切る方針を示した。
経緯知っているはず
賠償の支払い指針を策定してきた原子力損害賠償紛争審査会の会長で学習院大教授の能見善久(66)は東電の発表に首をかしげた。能見らは「帰還しても、収入が事故前通りになるとは言えない」との考えから、あえて就労不能損害が終了する時期を指針に盛り込まなかった。東電も経緯は知っているはずだった。
能見は、家屋などの財物賠償でも東電に苦い思いをさせられた。指針では賠償の基本的な考えを示すにとどめたが、東電は審査会の想定よりだいぶ低い賠償となる計算式を持ち出した。関係市町村が「これでは避難先で住居が買えない」と反発したのを受け、審査会は追加する形で、家屋の算定や新たに取得する住居との差額など基準を事細かに定め、東電の裁量権を削って対抗した。
確認する機会が必要
こうした東電の姿勢について能見は「東電は指針には反対しない。しかし、指針にはこの部分は書いてあるが、ここは書いていないのでこう考えましたと、自らの考えを東電の賠償基準に入れてくる」と指摘し、「いつとは言えないが、審査会として、東電が指針に基づいて賠償を行っているかどうか、確認するための機会が必要だ」とけん制する。
一方、東電は就労不能損害の一律賠償終了を決めた理由を「事故当時と比べ県内の雇用環境が改善している。この1年で就労を促進する」と説明する。
富岡町から三春町に避難し、広野町で再就職した吉田大志郎(29)は、賠償金でパチンコなどに興じる一部の被災者の姿を見ているだけに「賠償が働かない人を生んでいるのは事実」と眉をひそめるが、「高齢などで再就職が難しい人もいる」と東電による一律の賠償打ち切りには疑問を呈す。
帰還が進まない中、飲食や小売りなど原発事故前と同じ職場で同じ収入を得ることが困難とみられる人は多い。就労不能で賠償を受けている避難者の中には「東電には世話になったから」と気後れする人もいるが、不満の声は漏れてくる。「なぜ加害者が一方的に打ち切りを決めるのか」(文中敬称略)
(2014年5月1日 福島民友ニュース)
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( 2014年5月1日付・福島民友新聞掲載 )
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