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原発災害・「復興」の影
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避難指示解除めぐり“賛否両論” 賠償に影響、揺れる帰還

避難指示解除めぐり“賛否両論” 賠償に影響、揺れる帰還

古里での再出発を決めた森谷ハルイさん(左)と夫市男さん。賠償をめぐる問題は帰還の選択にまで影響が及ぶ

 「田村市が避難指示を解除すれば、うちでも解除せざるを得なくなる」。田村市東部の都路地区の避難指示が4月1日に解除される前、ほかの自治体の住民から市役所にこんな電話があった。苦情の主は「避難指示が解除となれば賠償が終わってしまう。とにかく解除は足並みをそろえてくれ」と一気にまくし立てて、一方的に電話を切った。

 再建の支えのはずが
 背景にあるのは、避難指示解除の1年後に待っている精神的賠償の終了だ。避難者の生活やその再建の支えとなるはずの賠償と住宅借り上げが、帰還の決断を鈍らせているという声が目立ってきている。電話の報告を受けた同市原子力災害対策課長の七海茂(55)は「早く帰還したいという人の切実な願いは(まだ戻りたくない人からは)理解されないのか」と考えざるを得なかった。
 「賠償目当てで避難しているなんて思われるのは耐えられない」。同市船引の仮設住宅から都路の自宅に戻ることを決めた農業森谷ハルイ(60)は避難先の住民との距離を置くようになった。船引の女性から掛けられた言葉がきっかけだった。「都路の人は(賠償を)もらってっから、着る物も食う物も違うわ」「都路さ、まだ帰らないの」
 森谷は早い時期から避難指示の解除を支持してきた。だが、周りには賠償が継続するようにと、解除に反対する人もいた。その気持ちは全く分からないわけではないが、「それを言ってしまったら、おしまい」という思いが、森谷にはある。

 どこまでが「正当」か
 賠償と向かい合う姿勢になぜ違いが出るのか。震災直後の政府の復興構想会議委員で、芥川賞作家の玄侑宗久(58)=三春町=は、個々の人生観の違いに加え、「(こういう損害があったと)手を挙げないと賠償しない東京電力の姿勢と、(原発事故の影響が多岐にわたり)どこまでが正当な賠償請求か分かりづらいことが影響している」と考える。「東電が『なるべく払わない』ような構えに映れば、被災者は『なるべく多く』と考えるのが自然だ」
 その上で玄侑は指摘する。「重要なのは矜持(きょうじ)を守ること。どうすれば豊かな人生を送れるのか、個々人が考える必要がある」(文中敬称略)=「償う」おわり

(2014年5月6日 福島民友ニュース)



( 2014年5月6日付・福島民友新聞掲載 )
 

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