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原発災害・「復興」の影
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「復興予算」現場とずれ 一見魅力的メニューも使いにくさ…

「復興予算」現場とずれ 一見魅力的メニューも使いにくさ…

ヤナギが生い茂る水田を見つめる菅野さんは、復興をめぐる国と町との考えに隔たりが大きいと感じている=28日、富岡町下郡山

 「国は自治体を信用してないですから」。郡山市郊外に設けられた富岡町郡山事務所。復興予算の使い勝手の悪さを説明する町職員の吐き捨てるような声に、町企画課長の菅野利行(56)はうなずいた。
 二十数兆円に及ぶ見通しの復興予算だが、最前線である現場の評判は芳しくない。復興庁がこれまでの交付金制度に新たな事業を加え創設した福島再生加速化交付金には、農業基盤整備など一見魅力的なメニューが並ぶが、避難町村の受けは、いまひとつだ。

 意欲つなぐ草刈り
 「(国が示す)基盤整備なんて本当に先の話だ」。富岡町は町全体がまだ避難区域。古里に時折足を運ぶ菅野は、田んぼなどにヤナギが生い茂る町の風景と、事故から3年がたって初めて町を視察した中央の役人が「被災地を見た」との高揚感を漂わせては復興への持論を語り出す姿とを思い浮かべながら続ける。「帰還の見通しが立たない中でも必要なのは、一時帰宅者の気持ちをなえさせないための草刈りや道路修繕といったもの」。ヤナギが群生しては農家の再興への意欲さえ押しつぶされるし、火災の恐れも増す。だから草刈りが目先の課題となる。だが、頻繁に代わる中央の担当者にはその意味合いが分からない。

 帰還前提の交付金
 国は、昨年になって避難者全員の帰還の前提を転換し、元の家に帰らない選択肢も示したが、加速化交付金で新たに加わった事業は帰還を前提としたものが中心だ。「中学2年生の娘がいる立場からいえば、帰るかどうか決めるのは30年後というのも現実的な話」と菅野。「国の姿勢は、帰還する人は早く戻して、戻らない人は移住させてという感じ。避難者をゼロにしたいのだろう」
 国会で復興が議題となる度、復興相の根本匠(63)が「使い勝手の良い交付金ができた」と胸を張る加速化交付金だが、他省庁の官僚からは「中途半端」との声も聞かれる。ある官僚は「帰還後の雇用がないというなら、国が会社をつくって雇用を生むぐらいすべき」と打ち明ける。「今の状況を変えなければという思いの官僚もいる。ただ避難町村からそういった声が上がってこないとどうにもできない」。そう語る官僚からは復興に向けた思いの強さにまじって、復興の在り方を決めるのはあくまで中央という自負もにじむ。
 「希望を言え」という国の姿勢に対し、町が求めているのは、自由に使える財源だ。菅野の横で冒頭の職員は続ける。「国はかつて、市町村に起債(借金)することすら認めなかった。今も、市町村の言う通りに金を出していたら、何に使うか分からないと思っているのだろう」(文中敬称略)

(2014年5月29日 福島民友ニュース)



( 2014年5月29日付・福島民友新聞掲載 )
 

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