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不登校…潜むSOS 避難で転校繰り返す、心のケア手薄
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「キッズハウス」で子どもを指導する玉根塾長(右)。原発事故を機に不登校の塾生が3倍に増えた=いわき市小名浜
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「避難する前の学校だったら、通えていたかもしれないなあ」。いわき市小名浜の学習塾「キッズハウス」。塾に通う不登校の中学生数人が、塾長の玉根洋子(56)にそう漏らした。
東京電力福島第1原発事故の前、玉根は富岡町や楢葉町でも指導に当たっており、塾には今、双葉郡から避難した子どもが多く通う。平日昼間から塾に来る不登校の塾生は、事故前は5、6人だったが、今は15人。大半は避難者だ。玉根は「もともと学校が苦手で、それでも踏ん張って通学していた子が、避難で転校を繰り返すうちに全く通えなくなってしまった」と言う。
生活環境変化が要因
県教委によると、2012(平成24)年度の県内の小、中学生の不登校は前年度比5%増の1566人。全国では4.1%減と年々減少傾向にある中での増加で、県教委は震災と原発事故に伴う生活環境の変化が一つの要因とみる。
「『福島から来たから』と気を使われ過ぎるのが、うざかった」。同塾の女子生徒は玉根に、避難で一時通った県外の学校での生活をそう振り返った。「避難前の学校の友達がいわき市の学校にいるのを知って通わせようと思ったが、学区内のアパートが全て埋まっていて転校できなかった」と打ち明ける親もいた。
不登校の背景にあるのは子どもたちの心の問題。放射線不安から外遊びが制限されるなどの不自由を経験しており、影響は避難者だけにとどまらない。「被災3県の中でも福島は子どもの心への対応が手薄。福島での子どもの心のケアはこれからといえる」。福島大が本年度から着手した「子どものメンタルヘルス支援事業」で、子どもの心のケアに当たる同大特任教授の桝屋二郎(41)=児童精神科医=は指摘する。
同事業では、専門家が依頼に基づいて学校を訪問し、子どもと面談したり、ストレスや心のつらさへの対処法を教える「心の授業」を行う。学校側からの需要は多く、須賀川一小も訪問を受ける学校の一つ。校長の渡辺真二(57)は「専門家の支援はありがたい。他に子どもたちの心の問題を相談しようと思っても、小児心療内科の専門家は限られているので、子どもを専門としない精神科の医師に診てもらうしかないのが現状だ」と語る。
周囲の協力が不可欠
桝屋は、子どもたちの「声なき声」の存在を心配する。「支援を求めるのは子どもの問題を理解し、教員の意識も高い学校。依頼してこない学校に深刻なケースの子どもがいる恐れがある」
キッズハウスには、今も不登校について相談が多く寄せられる。玉根は周囲の見守りが大切だと訴える。「不登校は今後も増えるだろう。そんな子どもは、学校に通わない自分を『悪い子』と責めてしまいがち。教育現場や医療機関、親が協力して支えるべきだ」(文中敬称略)
(2014年6月29日 福島民友ニュース)
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( 2014年6月29日付・福島民友新聞掲載 )
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