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原発災害・「復興」の影
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【 3 】
「認知症」深刻化の傾向 避難者側から発症に“不安の声”

「認知症」深刻化の傾向 避難者側から発症に“不安の声”

体力を付けようと仮設住宅内を歩く矢内さん。独り暮らしの生活に不安を抱えている=大玉村安達太良仮設住宅

 「俺の預金通帳を見せてくれ」。双葉郡に住所がある認知症患者を受け入れているグループホーム「シニアガーデン」(福島市)の管理者鈴木洋子(64)は、入所するお年寄りから毎日、そう要求されたことを思い出す。「お金を持ったまま死ねる訳はない。賠償金は俺の金なんだから生きているうちに自由に使う」と主張する人もいた。

 賠償金の存在が一因
 鈴木は、原発事故を機に認知症患者の病状が深刻化しており、その一因は賠償金にあると考える。「大金に強く執着し、『誰かに金をとられるのでは』との妄想に取りつかれるなど、心の病を抱えてしまった人がいた。避難者には賠償金さえなければ起こり得ない問題が生じており、認知症患者への影響はより大きい」
 深刻化のもう一つの要因として、鈴木は避難に伴う家族離散を挙げる。富岡町で施設を運営していた原発事故前は、月に一度は家族に入所者に会いに来てもらっていたが、当時は近くにいた家族も今はそれぞれ別の離れた場所で暮らすケースが多い。

 家族も高齢、面会減少
 事故後しばらくは避難先から訪れていた家族も、時間の経過に伴い面会が減少。家族に会えない入所者は生きる意欲を持てず、体も弱っていく。鈴木は「『私たちも具合が悪くて会いに行けない』と言う家族は多い。家族も高齢で、仮設住宅や借り上げ住宅での生活の長期化で体調を壊し、入院するなどしている。今まで通りの愛情は注げなくなってきている」と指摘する。
 避難者側からは、認知症発症への不安の声も上がる。「今日は朝から5時間ぐらい、パソコンでユーチューブ(動画サイト)を眺めていた。うちではしゃべる機会もなく、こんなにぼーっと毎日過ごしていては、認知症にもなってしまうよね」。大玉村の仮設住宅で暮らす富岡町の矢内能成(よしなり)(67)は苦笑する。
 家族と離れ、独り暮らし。避難を境に仕事もしなくなった。世界の艦船を紹介する雑誌を読むのが好きだったが、2月に直腸がんの手術を受けて以降は字を見るのもつらく感じるようになり、趣味を失った。「今後も1人で生活していけるか心配。周囲に迷惑を掛けることはしたくないんだけど」(文中敬称略)

(2014年7月1日 福島民友ニュース)



( 2014年7月1日付・福島民友新聞掲載 )
 

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