週末の福島市子どもの夢を育(はぐく)む施設「こむこむ」。2歳になる長男と遊んでいた同市の女性(35)は約1年前に離婚、長男と2人でアパートに暮らす。収入はパートの月給約10万円や児童手当など合わせて15万円ほど。長男の保育料は市の母子家庭支援策により無料。実家からの支援もあり「ゆとりはないが、何とか暮らしている」と生活ぶりを明かすが、「病気で仕事を休むと収入がなくなる」との不安がつきまとう。女性は定職を求め就職活動中で「資格や経験がなく正社員は難しい。フルタイムのパート職が見つかれば」と現実を直視するが、「正社員として就職したい」というのが本音だ。
県によると、県内の母子家庭は1998(平成10)年度の1万5982世帯から昨年度は2万2171世帯に増加。全世帯に占める割合は0.69ポイント増え3.05%となった。
福島市役所南庁舎1階にある市家庭児童相談室で、育児や家庭内の悩み事、困り事などの相談に応じている相談員の阿部英一さん(70)は「母子家庭で不況のしわ寄せを受けている」と説明する。同相談室の4〜7月の相談件数は160件で前年同期から45件増加した。相談の約4割は母子家庭の母親から寄せられ、非正規雇用打ち切りの「派遣切り」などに遭い、食費もままならない生活ぶりを訴えているという。
衆院選で各政党は母子家庭をはじめ共働き世帯などへの子育て支援策をマニフェスト(政権公約)に盛り込んだ。自民党は幼児教育費の無償化や一人親家庭への支援拡充などを掲げた。民主党は月額2万6000円の子ども手当支給、高校実質無償化などを示した。公明党は一人3万6000円の子育て応援特別手当、社民党は子ども手当の創設、共産党は母子加算の復活などを挙げている。
平日は毎日、相談室に詰め、悩みを抱えた母親から相談を受ける阿部さんは「雇用促進や保育所の待機児童の解消、住宅確保など、自立して暮らしたいという母親の思いをかなえられる条件整備がもっと必要」と指摘する。
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