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▽9 【07 8/29掲載】
金山町(下)

閉院した練馬の診療所で残務整理に忙しい市川さん

 
「家族のため」に決断/都内の歯科医、一家で移住
 金山町は現在、町内で空き家の実態調査を行っている。空き家を定住者受け入れの「資源」として積極的に活用するためだ。
 「団塊の世代の受け入れは過疎の抜本的な解決策にならない」と冷静な見方をする町地域振興課の須佐光夫さんも「空き家は、放っておけば朽ちる。だが、次世代の手に渡るまで移住した人たちに使ってもらえれば、集落は当面、維持できる」と話す。
 次世代に希望をつなぐため、町は同時にもう1つの取り組みを進めていた。
 盛夏の東京。都営地下鉄の駅前にある診療所で、歯科医師の市川公久さん(50)は引っ越し後の残務整理で慌ただしい。この地で100年続く歯科医院の3代目。「生粋の江戸っ子」というが、7月から家族4人で金山町民になった。年内には町の診療所で診察を始める見通しだ。
 金山町には現在、歯科診療所がない。治療の必要な町民は、近隣の市町村に通うしかない。歯科医の確保は町の大きな課題だった。
 一方、市川さんは数年前から地方移住を模索していた。「新規開業はリスクが大きいので北は北海道、西は徳島、いくつかの自治体に勤務医での就職を打診していた」と話す。金山町を知ったのは1年前。田舎暮らしの情報を発信する「ふるさと情報センター」から紹介された。町はすぐさま誘致に動いた。市川さんにとっては、条件が折り合ったのが同町だった。
 「金山で町長と会った時、『東京の方が便利でしょう』と言われた。でも、東京は道路が渋滞していて駐車場もない。買い物はインターネットで済ます。『東京でなければ』という理由が自分にはない」と市川さんは言い「移住は家族全員のため」と理由を語る。
 「街場の開業医は、地方より収入は多いが、その分、神経をすり減らしている。都内に開業医はコンビニエンスストアの倍ある。悪評が立ったらすぐアウト」。故郷での暮らしが、市川さんにはいつの間にか息苦しくなっていた。
 5歳と1歳半の息子の子育ても比重が大きい。「子どもを育てるなら塾やテレビゲームがない環境と考えた」。そして、自宅のマンションで階下の住人から「子どもの歩き回る音がうるさい」と言われた時、移住を決断していた。
 須佐さんは「過疎地で医師、歯科医師の存在は大きい」と一家の移住が生む効果に期待を膨らませる。
 無医地区 半径4キロ以内に50人以上の住民が居住しながら医療機関のない地域。県内には2006(平成18)年度現在、10市町村に17地区ある。同じく歯科医のいない無歯科医地区は11市町村に23地区。
 


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