【 外遊びと発達(1) 】 「体の使い方伝えたい」

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 「さあ出掛けよう」。秋の日の午前、上着を着込んだ3歳児クラスの19人が、さくら保育園(福島市)を出た。

 子どもたちは近所の犬に声を掛けるなどしながら進む。手には木の枝や真っ赤な落ち葉。「あっちから車来た!」と指さす子ども。車が近づいても動揺しない。「慣れたものだね」。担任の飯島優(26)は1年前を思った。

 交通ルール知らない

 その子どもたちが入園して生まれて初めての散歩に出掛けたのは、震災、原発事故から2年半がたった昨年10月4日。園庭から柵越しにしか見ていなかったバスが、その日は目の前の車道を走る。まだ交通ルールを知らない子どもたち。「こっちに向かって来るんじゃないか。こわい」。子どもたちは緊張で固まり、近づいてくるバスをじっと注視した。散歩を楽しむ余裕はなかった。

 保育園は、原発事故で福島市内でも比較的放射線量が高い地域となった渡利地区にある。除染が進むにつれ園庭には子どもたちの歓声が戻ったが、園外には除染未着手の山や道路があり、散歩の再開には慎重にならざるを得なかった。

 2年半の歳月を経て散歩が再開された背景には、保育園側の思いがあった。

 「それじゃ上れないよ」。昨年、飯島は2歳児クラスで、滑り台の斜面を上ろうとしている子どもを見た。足の甲を下にして、手すりを持った両手に力を込めている。足の指を下にして踏ん張るよう教えても、うまくできない。

 体を左右に揺らす、幼い歩き方も気になった。段差が少ない園内では、バランスを取りながら歩くことを教えるのが難しい。床に敷いたマットの下に物を入れ、「でこぼこ道」をつくって歩かせるなど、工夫を凝らした。

 「子どもたちに『体の使い方』を教えたい」。保育園は専門家の協力を得て園の周囲の放射線量を測り、安心して散歩できるルートを調べた上で、散歩再開の方針を保護者との懇談会で示した。

 保育園の方針を歓迎

 親にも焦りがあった。「長く歩くこともできないし、赤信号で止まることすら知らない。来年から小学校まで歩いていけるの?」。昨年、長男泰樹(7)のことを心配していた阿曽牧子(42)は、保育園の方針を歓迎した。

 「超楽しかったけど、超疲れた」。散歩が再開された日、泰樹が家に帰って笑顔で話した。

 県が昨年11月〜今年1月、「こども環境学会」に委託して実施した県民アンケートでは、震災、原発事故の子どもへの影響で心配なこととして、「放射線による健康被害」(61.7%)に次いで「外遊び・自然体験の不足」(57.9%)、「運動不足」(35.3%)が多かった。

 4月、泰樹は小学校に入学。登下校の疲労からか、家に帰るなり決まって眠りに就いた。

 今年の夏休み明けからは、帰宅しても寝込まなくなった。「少しずつ、体力が戻ってきている」。牧子はそう実感する。(文中敬称略)