【 外遊びと発達(2) 】 自然体験を取り戻す

(数字はいいね)  このエントリーをはてなブックマークに追加 

散歩の途中、道端の植物に手を伸ばす子どもたち。自然の中のさまざまな物が好奇心を刺激する=福島市渡利

 強い風が木々を揺らし落ち葉を舞い上げる。「『やまんじい』が叫んでる」。さくら保育園(福島市)の近く、晩秋の散歩道で、3歳児クラスの子どもが声を上げた。

 つながる絵本と現実

 絵本「やまんじいとたろう」(童心社)に登場する「やまんじい」は山に住み、大声を出すと風が吹く。「普通に歩いたらただの散歩だが、子どもの前に広がるのはイメージの世界。絵本や現実の出来事が全てつながっている」。担任の飯島優(26)は言う。

 クラスで育てたカエルを放した田んぼ。「おーいカエルさん、今日は何してんのー」。子どもたちの興味を引く所が次々と現れ、好奇心を刺激する。

 毎年大勢の観光客でにぎわう花見山からも近く、山に囲まれた保育園。震災と原発事故の前、子どもたちは山登りを楽しんだ。乳児は園のすぐ目の前の山で神社の石段をハイハイした。

 今は、山には入らない。

 環境に親しむ目標

 厚生労働省の「保育所保育指針」、文部科学省の「幼稚園教育要領」はいずれも、幼児が「身近な環境に親しみ、自然と触れ合う中でさまざまな事象に興味や関心を持つ」ことを目標に掲げる。

 「子どもたちから真っ先に奪われたのは『自然』」。保育園の取り組みをまとめた本「それでも、さくらは咲く」(かもがわ出版)に、園長の斎藤美智子(60)はそう書いた。

 阿曽牧子(42)は原発事故の前、2歳だった長男泰樹(7)が保育園の散歩で神社に行ったことを思い出す。木の実などを集めて「やまんじいのご飯」を境内に置いた。

 次の日神社に行くと、なくなっていた。「やまんじいが食べたんだ」と泰樹。

 「絵本の世界と周囲の自然がリンクするような保育園の取り組み。そんな生活をさせてあげたかったとも思う」と語る。

 保育園が昨年秋に再開した散歩は、自然体験を取り戻す第一歩だ。

 ある休日、牧子が車で保育園の近くを通ると、次男晴樹(2)が窓の外を見て声を出した。田んぼや木、犬を指さす。

 「何?散歩で見たの?」。大きくうなずく。

 屋内の人工物よりも頭に残る情報量が多い自然。まだ幼い晴樹にとって、散歩が再開されたことは幸運だったと牧子は痛感する。(文中敬称略)