【 外遊びと発達(3) 】 放射線の「見える化」

 

 晩秋の日の午後、3歳児クラス担任の飯島優(26)に子どもが駆け寄った。「ミント、大丈夫だったって」

 午前中の散歩で、道端で摘んできたミント。放射性物質検査で「基準値未満」だった。子どもたちは自分のコップに水を注いでミントを入れ、「ミントティー」の香りを楽しんだ。

 測定器で何でも測る

 さくら保育園(福島市)は2012(平成24)年3月、独自に放射性物質の測定器を導入。「基準値」は、国の食品基準値の10分の1となる1キロ当たり10ベクレルに設定している。気になった物は何でも測り、放射線の「見える化」に取り組んでいる。

 昨年秋に再開した散歩でも、「何でも測定」が前提だ。

 年が明けて1月7日、散歩に出掛けた子どもたちが、畑で赤カブをもらってきた。散歩再開後、初めてもらってきた食べ物だった。原発事故で福島市内でも比較的放射線量が高い地域となった渡利地区。測定を担当する調理員の相馬久美子(37)は測定にかかる10分間、いろいろなことを考えた。

 「もし基準値を超える値が出たら、子どもたちにどう伝えよう」。子どもたちは絵本を読むなどしながら待っている。

 結果は「基準値未満」。相馬はほっと胸をなで下ろした。酢漬けにして給食と一緒に食べた。

 「何でも測定」は、食べ物以外も含む。クラスで飼育するザリガニ、カブトムシ、オタマジャクシ。全て測った。

 移りにくいセシウム

 散歩で拾うドングリなども測定する。測り続けることで分かってきたこともある。セシウムの吸着力は強く、木の実を触っても子どもの手に移りにくいことや、道端の石が自然由来の放射線を発していることも分かった。

 「放射能、測ってー」。園内のプランターで栽培したキュウリを手に、子どもたちが給食室にやってくる。「子どもたちには言ってほしくない言葉だな」。相馬は以前は戸惑いも感じていた。だが今は、「測定が、子どもたちの経験の幅を広げることにつながるなら」と、前向きにとらえている。

 11月、散歩に出掛けた子どもがまたカブをもらってきた。

 「基準値未満」。測定の10分間、相馬は今回、1月の時ほど緊張しなかった。(文中敬称略)