学校再開、人数戻らず 長距離通学、教育環境などに課題

 
学校再開、人数戻らず 長距離通学、教育環境などに課題

 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故に伴う子どもたちの避難は3年9カ月余りに及び、子どもたちのそれぞれの生活への順応が進んでいる。しかし、避難先で再開された小中学校の中には依然、長距離通学や不十分な教育環境などの課題を抱えたままの学校もある。

 県のまとめによると、震災で県内外に避難する18歳未満の児童・生徒の数は昨年4月1日現在、2万6067人。このうち県内への避難者は1万2759人、県外は1万3308人。元の居住地でみると、避難区域を抱える双葉郡など10市町村と、避難区域などがなくなった田村市、広野町からは計1万7345人が避難している。

 2012(平成24)年4月1日以降の県内外への避難児童・生徒数の推移を示したのが【グラフ1】で、2年間で1割以上減った。ただ、県子育て支援課は「子育て支援策の効果で子どもの帰還が進んだ可能性はあるが、個々の事情もあり分析は難しい」としている。

 避難区域を抱える市町村のうち、浪江町は震災前の小中学校9校のうち6校が休業しているが、ほかの9市町村は避難先などで全校を再開させた。避難区域がなくなった田村市と広野町も全校を再開させている。

 しかし、ほとんどの小中学校が再開したのに、児童・生徒数は震災前と比べて大幅に減少している。【グラフ2】でみるように、再開した学校に通う児童・生徒数は本年度3853人で、震災前の1万2515人と比べ8662人、7割近くも減った。

 少子化に加え、避難先自治体の学校に通う児童・生徒が多いのが実態だ。1クラス10人に満たない学校もあり、人数が減って部活動が限定されたり、集団生活を学ぶ機会が減ったりで教育への影響を懸念する声は大きい。

 再開した学校計49校のうち9割以上の45校がバス通学を実施。長距離通学の学校も多く、富岡町の小中学校4校の一部の児童・生徒は避難先の郡山市から三春町の仮校舎まで約1時間のバス通学が続く。県教育庁の飯村新市義務教育課長は「避難元、避難先いずれの学校に通う子どもも支えていく必要がある」としている。

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 順応する力が強い子どもたちは避難生活にもがきながらも適応し始めるが、体力低下が指摘される中で乗り物を使った長距離通学の日常化などは悪影響が心配されている。避難長期化の影響と課題を子どもたちの生活や教育環境の面から考える。