【 避難生活と順応(1) 】 厳しい現状にも慣れ

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【 避難生活と順応(1) 】 厳しい現状にも慣れ

学校に到着し、通学バスを降りる児童=2014年12月17日、三春町の富岡町小中学校

 1台のバスが、郡山市のビッグパレットふくしまに近い南1丁目仮設住宅の集合場所に到着した。昨年12月17日の朝。「おはよー」。子どもたちが次々と乗り込んでいく。富岡町から同市の借り上げ住宅に避難する宝槻さくら(13)は、母友恵(37)に車で集合場所に送り届けてもらうと、後ろから3列目の左側の席に腰を落ち着けた。子どもたち全員が、それぞれの「指定席」に座る仕組みになっている。

 「非日常」が普通に

 バスの行き先は十数キロ先の三春町にある富岡町小中学校。中学1年のさくらは、小学4年の時の2011(平成23)年9月に小中学校が再開して以来、バス通学している。学校は廃工場を使った仮校舎で、小中学校4校が一緒に入る。震災前には70人ほどいた同級生は今、10人に満たないが、さくらはもう、それを「普通のこと」としている。

 バスに乗り込むのは幼稚園児と小中学生20人余り。バスは郡山市や三春町の仮設住宅などに寄りながら進む。学校までの道のりは約1時間。歌ったり、おしゃべりしたり、子どもたちは時間の使い方をおのおので身に付けた。さくらは「読書したり、勉強していることが多い」という。

 さくらは、初めからうまくバスに乗れていたわけではない。車酔いがひどく、必ず酔い止めの薬を飲んでいた。約1カ月かけて薬を徐々に減らすと、バスが苦ではなくなった。今ではもう、車内で本が読めるまでになっている。

 「たくましくなったな」。友恵は、長女の成長を頼もしく思う。ただ、その思いには複雑な感情も入り交じる。

 福島大行政政策学類教授の今井照(61)らが行った避難者を対象にした調査では、12年の段階で「避難生活に慣れた」と回答した人が約8割だった。しかし、今井は調査の結びで避難者のそうした「落ち着き」について、震災前の水準に届かず現状に慣れただけと指摘、「良い意味の落ち着きであるはずがない」とまとめた。

 親思い心押し隠す

 今井は「生活の変化には大人よりも子どもの方が順応しやすい。ただ、『親を安心させたい』などいろいろな理由で、子どもは心を押し隠す場合もある」とみている。

 友恵は「さくらを郡山市の学校に通学させていたら、どうだっただろう」と考えることがある。幸い、さくらは今の学校で仲良しの友達もいる。ただ、部活動もできない行き帰り1便ずつの通学バスに拘束され、避難先の家々が離れていて友達と満足に遊べない現状は、震災前と比べて恵まれた環境とは言い難い。

 休日などに親子で過ごす時間は増えた。ただ、友恵は「日常に埋もれず、娘の小さな変化も見逃さずにいてあげたい」と思う。(文中敬称略)