【 避難生活と順応(3) 】 「ライン」に頼る交流

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 富岡一、二の両中学校が昨年12月5日に郡山市で開いたボウリング大会。富岡一中1年の宝槻さくら(13)が投じたボールは、残っていたピンを全てはじいた。人生で初めての「スペア」。さくらは少し恥ずかしそうに笑顔を浮かべながら、控えめに友達と盛り上がった。

 珍しい「遊ぶ」機会

 さくらと同級生が校外で一緒に「遊ぶ」ことは珍しい。富岡町の生徒たちは同市や三春町など各地に避難しており、それぞれの家が離れているのが大きな理由だ。しかも、帰りの通学バスは1便で、部活動もできないため、授業が終わると生徒たちはそのまま帰宅する。

 さくらは放課後や休日、母友恵(37)と買い物に行ったり、家で読書をしたりすることが多い。

 直接会って遊ぶ代わりに、さくらと友達の心をつないでいるのは無料通信アプリ「LINE(ライン)」。さくらは家に帰ると、友達とのやりとりに夢中になる。

 お気に入りはキャラクターなどが描かれた「スタンプ」。同じスタンプを何度も連続で送ることもある。言葉を添えることは少ない。言葉を選んでそれぞれの思いを表現しなくても、スタンプのやりとりで「気持ちが分かり合えている気がする」という。

 気持ちを表に出す姿

 ボウリング大会は学校側が企画した。富岡一中校長の吉田隆見(60)は生徒たちを見つめ、「こうした機会をさらにつくってあげたい」とあらためて思った。ストライクやスペアを取るたびにガッツポーズしたり、あるいはガターで悔しがったり、表現の仕方に濃淡はあるが、気持ちを表に出す姿は、通常の学校生活ではあまり見られない光景だ。

 普段の生徒たちは、あいさつの声が小さく、手を挙げて発表することが少ないように感じる。富岡町小中学校で授業を再開した二つの中学校と、富岡一、二両小学校の4校には震災前、計約1600人の児童、生徒がいた。しかし、現在は計49人。友達と触れ合う時間が少なく、少人数での学校生活で感情を表現する機会も少ないように思う。

 さくらはボウリング大会の後、家に帰ると友達へラインを送った。「お疲れさまー」。ただ、一緒に遊んでいる時ほど「テンション(気分)」は上がらない。さくらは、また友達と外へ遊びに行きたいと思う。(文中敬称略)