【 避難生活と順応(5) 】 「もっと勉強したい」

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 「もっと、勉強がしたいんだけど」。浪江町大堀地区から本宮市に避難する山本史奈(11)は最近、母みどり(47)にこう話す。史奈は、福島大が避難する子どもを対象に行う「土曜子どもキャンパス」に参加しているが、最近は物足りないらしい。みどりは、長女の成長を実感しながら、苦笑いする。

 運動でストレス発散

 子どもキャンパスは、震災から間もない2011(平成23)年4月に始まった。当初は同大の教員や学生が仮設住宅などに出向いていたが、今は浪江、飯舘両町村の小中学生ら約30人が避難先から同大に集まり、学生らと勉強やスポーツ、工作などをする。

 綱渡りにドッジボール。勉強の合間にスポーツなどを取り入れているのは、運動不足の子どもたちのストレス発散や、勉強に向かう集中力を高めるため。ただ、「大人の理屈」をよそに、史奈の最近の興味はもっぱら、得意の理科の勉強にある。

 そんな史奈は、現状に順応し、余裕が出てきたようにみどりには見える。震災直後の史奈は、避難のストレスからか夜、泣くことが多かった。学生やほかの学校の子どもと交流し、団体行動も学ぶことができるキャンパスに通うことは、史奈にとって良い機会なのだろうと、みどりは思う。

 キャンパスに携わる同大人間発達文化学類准教授の安田俊広(45)も、被災直後と比べて「子どもたちの表情が変わったな」と感じている。

 震災当初のキャンパスでは、子どもたちは勉強の時間でも席を立って隣の子にちょっかいを出したり、学生をたたいたりする行動が目立った。しかし、今はそうした様子はほとんどない。安田は問題行動の裏に、避難先に居場所がなかったり、運動不足などの影響があったのだろうと思う。

 岐路迎えたキャンパス

 震災から3年以上が過ぎ、避難先で新たな関係を築いてキャンパスに来なくなった子どももいる。良い意味でキャンパスは岐路を迎えている。

 ただ、安田は、支援の手がまだ必要と感じている。参加する子どもの中に、少ない運動でも疲れを見せ、思い通りにいかないとすぐにやめてしまう姿も、まだ見られるからだ。「子どもの現状を大人が理解することが大事。課題を解決するための機会を積極的につくってあげたい」(文中敬称略)