【 ストレスと向き合う(3) 】 親から放射線を理解

 
【 ストレスと向き合う(3) 】 親から放射線を理解

「福島の子ども希望プラン」の放射線講座で、愛由子さんが取ったメモ。放射線の種類などについて書き取った

 「親の不安が、子どもを巻き込んでいた。娘にはかわいそうなことをしたと、今では思う」。郡山市の三浦隆一(49)が反省とともに思い出すのは、昨年の初夏のある日の出来事だ。

 ダンゴムシにも不安

 娘の美菜(9)が、ダンゴムシを手に帰宅した。「ダンゴムシも放射能を含んでいるかもしれない」。三浦はそう思い、娘に伝えた。「お母さんが心配するから、外に戻してきなさい」。美菜は「しょうがないな」という顔で再び家を出た。

 目に見えない放射線。三浦が放射線に漠然とした不安を抱く一方、美菜が不安を口にすることはなかった。だが、「外で土に触るのにも、大人から『何言われるのかな』といちいち気にしながらの生活だっただろう」と三浦は思う。

 昨年8月、親子で、ストレスの対処法や放射線について学ぶ「福島の子ども希望プラン」に参加した。

 「手洗いとうがいを」

 「外でたくさん遊んでいいよ。だけどおうちに帰ったら、必ず手洗いとうがいをしよう」

 放射線講座の講師の説明で、手洗いが、無用な被ばくを避ける助けになると知った。上手な手洗いの仕方も学んだ。特殊なライトで照らすと、手のひらの洗い残しが浮かび上がった。

 三浦は美菜に言った。「手洗いはしっかりしよう。(局所的に放射線量が高い)側溝などには、むやみに近づかないようにしよう」

 「分かった」

 講座が終わって3日後、三浦は放射線測定器を購入。自宅の周辺など、気になった場所を測った。放射線の遮蔽(しゃへい)に使っていたペットボトルや、庭で育てたゴーヤーなども放射性物質検査を行う公民館に持ち込んでみた。どれも不検出だった。

 測定をこまめに行うことで、放射線への漠然とした思いが明快になったと感じる。

 福島大災害心理研究所の調査によると、親の高ストレス・不安は、子どものストレスと相関関係にあった。子どもの心の安定に向け、親の放射線不安などの解消に取り組むべきと指摘されている。

 三浦は今では、ダンゴムシを自宅で飼育するのも問題ないと考えている。「放射線について、子ども自身が判断するのは難しい面もある。まずは親が正しく理解するべきなんだろう」(文中仮名、敬称略)