【 ストレスと向き合う(7) 】 「ケア」から「教育」へ

 
【 ストレスと向き合う(7) 】 「ケア」から「教育」へ

「子どもにはストレスに打ち勝つ力が備わっている」と話す成井理事長

 震災、原発事故後の子どもたちの心の現状や求められる取り組みについて、親子などへの支援活動を続けるNPO法人ハートフルハート未来を育む会(郡山市)の理事長で県民健康調査検討委員も務める臨床心理士、成井香苗さん(62)に聞いた。

 「曖昧さ」問題の特徴

 --子どもたちの心の現状は。

 「目に見えない放射線が及ぼす『曖昧な不安』や、自宅がそのまま残っているのに、放射線量が高くて避難を続けざるを得ないなどの『曖昧な喪失』が、福島が抱えた心の問題の特徴だ。中でも子どもは、不安を言葉で表現できなかったり、自分の不安を本人自身も評価できていないことがある。言葉を習得する以前に震災、原発事故に遭った子どものトラウマが今後どう影響するかなども含め、注意して見ていく必要がある」

 --放射線不安の影響は。

 「野外に散歩に出掛けた未就学の子どもが、放射線を気にして『草に触れない。草が生えているこの道は通れない』と立ちすくんだという話を支援活動の中で聞いた。この年代の子どもは親など信頼する大人の言うことは全て事実だととらえるため、親が放射線に強い不安を持っていると、子どももその不安に『巻き込まれる』ことになる」

 --求められる取り組みは。

 「大人は、放射線の影響について主体的に情報を集め、自分で判断して生活することができる。子どもにもその判断を促していく教育が必要だ。昨年から、無用な被ばくを避けるための手段や、ストレスをためないで生活する工夫などを子どもたちに伝える事業を始めた。従来の『心のケア』から『教育』へ、必要な取り組みが移ってきていると感じる」

 学習通じて認識修正

 --そうした取り組みが必要な子どもの年代とは。

 「子どもは小学校に進学すると、学習を通じてそれまでの認識を修正するようになる。この段階で放射線への正しい理解や、心との向き合い方を教えることには意義がある。子どもは大人と比べて心が柔軟で、不安、ストレスに打ち勝つ力も、もともと備わっている。子ども本来の力を支える取り組みが必要だ」=「ストレスと向き合う」おわり