甲状腺検査"長い目が必要" 不安払拭へ正確な情報発信

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甲状腺検査

 東京電力福島第1原発事故の発生時に18歳以下だった県民を対象にした甲状腺検査で、検査の信頼性確保や正確な情報発信こそ必要だという指摘が強い。検査結果を分析する県民健康調査検討委員会は「今のところ、見つかった甲状腺がんは放射線によるものとは考えにくい」とするが、県民の不安はぬぐい切れていない。検査への不信感が高まれば受診率が伸びず、「子どもの健康を長期間見守る」という目的が揺らぐ。対策は待ったなしだ。

 チェルノブイリ原発事故では発生から4〜5年後に子どもの甲状腺がんが急増した。県は福島第1原発事故の直後から、子どもの甲状腺の状態をつかむ1巡目の「先行検査」を行い、2巡目以降の「本格検査」と比べることで放射線の影響がないかどうか調べている。対象者は、先行検査が約37万人、本格検査は事故後1年間に生まれた子どもを加えた約38万5000人。

 1、2巡目とも検査は2段階に分けて行われる。第1段階(1次検査)では超音波で甲状腺を調べ、しこり、体液がたまる小さな袋(嚢胞(のうほう))の有無や大きさの順にA1、A2、B、Cと判定。BとCは血液や細胞を詳しく調べる段階(2次検査)に進む。

 先行検査の判定状況を昨年末現在でみたのが【グラフ1】、2巡目の本格検査の結果を同じ時期にみたのが【グラフ2】。それぞれ1次検査の段階でまとめた。

 2次検査では、先行検査で110人、本格検査で8人が「がん、またはがんの疑い」と診断された。

 本格検査でがんなどと診断された8人の先行検査の診断は、しこりなどが見つからないA1が5人、しこりが5ミリ以下などのA2が3人。

 福島医大は「甲状腺がんは進行が比較的遅く、現在の検査間隔(20歳までは2年、それ以降は5年)で治療などの対応が十分できている」とする。

 また、県民健康調査検討委は、がん発生率に大きな地域差はみられないため、現状では放射線の影響について否定的な立場を取る。

 国立がん研究センターのまとめによると、2013(平成25)年の人口10万人当たりの年間死亡者数は、がん全体で290.3人。一方、甲状腺がんは1.4人と比較的少なく、進行が遅いため症状が出る前に寿命を迎えるなど自覚症状のないケースも多い。一部の専門家は、治療の必要がないケースまで全て調べる現在の検査が「過剰診断」につながる可能性があると指摘する。

 同大は「治療の必要があるがんを治療している」と反論する一方、検査基準などについては「議論を進め対応を検討する」とする。

 先行検査で1次検査の受診率は昨年末現在、81.2%だが、県外進学者らを含む事故当時16〜18歳の世代では51.9%、放射線への不安が比較的低い会津地域で65.7%と伸び悩み、課題もある。検討委の星北斗座長は「県民に(甲状腺がんなどの)正しい理解が伝わるように説明を続けていく」と強調する。

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 放射能汚染による子どもたちへの影響で最も注目される甲状腺がん。その正しい理解と早期発見を目指しつつ、走りながら行われている甲状腺検査の課題を追う。