【 甲状腺検査(6) 】 「正しい情報発信」重要

 
【 甲状腺検査(6) 】 「正しい情報発信」重要

甲状腺検査の情報発信の在り方などを議論した県民健康調査検討委員会=2月12日、福島市

 「検査間隔が2年で大丈夫なんだろうか」。いわき市の会社員星野雅貴(42)は、甲状腺検査に対する漠然とした不安があった。ただ、福島医大の甲状腺検査説明会に参加、講師から「甲状腺がんは進行が遅い」などと説明を受け、安心できた。

 子ども3人が検査を受け、「異常なし」と診断された。しかし、説明会前は不安だった。新聞やテレビ、インターネットなど、世間には甲状腺検査に関するさまざまな情報があふれ、何が正しいか判断するのは難しい。星野は「正しい知識を学ぶ機会が、さらにあってほしい」と願う。

 資料への記載で議論

 2月12日に福島市で開かれた県民健康調査検討委員会。原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)の福島第1原発事故の見解について、資料への記載の仕方をめぐり議論となった。

 UNSCEARは、福島第1原発事故の報告書で「放射線被ばくにより今後、がんの発生率に識別できるような変化(上昇)があるとは予測していない」としている。しかし、資料の記載は、被ばくの影響の可能性を強調しているように読み取れる内容だった。委員から、ニュアンスに対し疑問の声が上がった。

 座長の星北斗(50)はこの日、報道関係者に対しても「数字だけが独り歩きすることがないようにしてほしい」と、正しい情報発信の重要性を再三にわたり訴えた。

 「言葉が独り歩き」

 情報社会論を専門とする福島大行政政策学類の准教授佐々木康文(44)は、甲状腺検査や放射線をめぐり「一つの言葉が独り歩きしているケースがある」と感じている。

 「例えば学者的な言葉で『影響はゼロではない』と言っても、受け手によって捉え方はさまざま。専門家が『ほとんど安全』と考えるなら、一歩踏み出して『リスクは限りなく小さい』などの言葉を添え、一般の人との間をつなぐ必要がある」と指摘する。

 その上で佐々木は続ける。「最終的に情報を判断するのは受け手側。ただ、正しく判断できるように、メディアは背景などをしっかり提示し、専門家は受け手と向き合いながら情報発信すべきだろう」(文中敬称略)